【東京科学大学】「データサイエンス・AI全学教育機構」とは?
東京科学大学
2024年10月に伝統ある東京医科歯科大学・東京工業大学が統合し、誕生した東京科学大学。同学は、最先端のデータサイエンス・AI(DS・AI)の知識と技術を、学生一人ひとりの専門分野を越えて領域横断的かつシステマティックに学修することで、社会的課題解決やDS・AI研究開発を強力に推進することのできるDX人材の育成を目的として、「データサイエンス・AI全学教育機構」を設置している。
データサイエンス・AIの「共創型エキスパート」人材育成の拠点に

2024年10月の大学統合以前には、東京工業大学において、2019年度から大学院生を対象としたデータサイエンス・AI全学教育を国内で初めて開始し、2022年度から文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育の全国展開の推進」事業に参加して、「数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム」における拠点校として活動してきた。
また、東京医科歯科大学においては、2020年度より「数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム」唯一の医歯学系分野における特定分野協力校(2022年度からは特定分野校)として活動してきた。
大学統合を機に、両大学のデータサイエンス・AI教育事業を統合し、拠点校と特定分野校の機能を担う全学教育組織として、東京科学大学データサイエンス・AI全学教育機構が2024年10月に設置された。同学におけるデータサイエンス・AI分野の教育は、理工学系から医歯学系という広範な領域をカバーする全学教育へと拡大した。
同学では、学士課程初年次から大学院博士後期課程までをカバーする「データサイエンス・AI全学教育プログラム」を実施しており、(1)DS・AIを駆使し、(2)DS・AIで交わり、(3)DS・AIを教えることのできる「共創型エキスパート人材」並びに自らの専門分野におけるDS・AI研究開発を推進できる人材の育成を目指している。
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東京科学大学「データサイエンス・AI全学教育機構」
「共創型エキスパート」人材とは?
東京科学大学の考える「共創型エキスパート」人材とは、データサイエンスやAIの高度な専門知識や技術を有するだけでなく、専門分野の境界を越えてイノベーションを創出し、その未来を担う人材育成もできる専門家のこと。所属する学院の専門に依らずに、基盤となる数理・データサイエンス・AIの素養を修得する過程において、学生にはデータサイエンス・AIを(1)「駆使できる理論的な基盤を身につけ」、(2)「専門の境界を越えて多様な人々と交わり」、さらには学んだことを生かして(3)「未来を担う若者を教えられる」トップレベルの人材に成長できるよう取り組んでいる。

大学院では、エキスパートレベル、エキスパートレベルプラスの科目群を履修するだけではなく、連携企業からのデータサイエンス・AI活用事例の学びや三大学連合(東京科学大・東京外国語大・一橋大)での相互受講といった他大学との連携企業や他大学と連携したプログラムにより、「共創型エキスパート」人材を育成している。
「データサイエンス・AI全学教育」 3つの特長
1 学士課程から大学院まで一貫した全学教育プログラム
①データサイエンス・AIを駆使し、②データサイエンス・AIで交わり、③データサイエンス・AIを教えることのできる「共創型エキスパート」人材の育成をめざす。第1の能力である「データサイエンス・AIを駆使するための理論的基盤」を強化し、第2の能力である「データサイエンス・AIを介して多様な人々と交わる力」を醸成するだけでなく、第3の能力である「データサイエンス・AIを教える力」を身につけるプログラムも設置。これらの3つの能力を備えたトップ人材を育成するために、リテラシーレベル、応用基礎レベル、エキスパートレベル、エキスパートレベルプラスという学士課程から修士、博士後期課程までを包含する体系化された全学教育を提供している。

2 社会的課題解決能力を身につけるための企業連携
40社以上もの企業が参加する国内最大規模の企業連携コンソーシアムを確立し、社会的課題解決能力の養成を組み込んだ多様な授業科目を展開。
各企業の技術者がオムニバス形式で講義を行う大学院科目『応用実践データサイエンス・AI』や、イベント『DS&AIフォーラム』に加えて、2024年度第4クォーターより、DS・AIインターンシップ科目を開講した。学生が企業や研究機関など外部組織での就業体験を通して、データサイエンス・AIの知識を実践に活かして問題解決する能力を修得することを目的としている。
3 国内外の他大学への授業配信などの連携
文部科学省により選定された「数理・データサイエンス・AI教育の全国展開の推進」拠点校として、他大学の教育支援にも力を注いでいる。英語で行われる一部の大学院授業を海外大学、TAIST(Thailand Advanced Institute of Science and Technology /タイ王国)へ配信していることも特長のひとつだ。

4つのレベルの全学教育プログラムを実施
「データサイエンス・AI全学教育機構」では、①リテラシーレベル、②応用基礎レベル、③エキスパートレベル、④エキスパートレベルプラスの4つの全学教育プログラムを実施。これは、学士課程から修士、博士後期課程までを包含する体系化された全学教育となっている。それぞれの教育プログラムについては、修了者に対して電子的な修了証である「オープンバッジ」を半期ごとに発行し、教育を受けた学生であることを速やかに社会に示すための土台がつくられている。
また、同機構が開講する授業はどれも特徴的であると言える。
①リテラシーレベルに含まれる『情報リテラシ第一・第二』『コンピュータサイエンス第一』では、数理・データサイエンス・AIの基礎的素養の修得と利活用に関する基本的な能力の獲得をめざす。
②応用基礎レベルには『コンピュータサイエンス第二』『応用基礎データサイエンス・AI第一・第二』が含まれるが、これはリテラシーレベルの素養を基として、より発展的な素養や実践スキルを修得し、エキスパートレベルへと繋げていくことを目標としている。

大学院修士課程・博士後期課程の学生を対象とする③エキスパートレベル④エキスパートレベルプラスでは、東京科学大学ならではの特徴がある。データサイエンス・AIの理論を学ぶ『基盤系科目群』『発展系科目群』、企業におけるデータサイエンス・AIの活用事例を学ぶ『応用実践系科目群』、最先端の内容に即してデータサイエンス・AIの理論的・倫理的側面を深く学ぶ『先端系科目群』、異分野の研究者とのコミュニケーション能力を涵養する『共創型科目群』という全く種別の異なる科目群を提供し、それらを横断的に履修することで、データサイエンス・AIで社会的問題を解決する能力、データサイエンス・AIを他分野とつなげる力、および、データサイエンス・AIを教える能力を養っていく。
上記の4つの教育プログラムに加え、2024年度より、データサイエンス・AIを教える能力を特に育成するために、「TF(Teaching Fellow)育成プログラム」をスタートさせた。高度な専門性と教育力を同時に学びながら、最終段階では一部の授業を担当できるレベルになることを目標としている。
40社以上の企業がデータサイエンス・AI関連の講義を担当

「データサイエンス・AI全学教育機構」は、企業と共同で教育コンソーシアムを形成している。エキスパートレベルの「応用実践」科目で、同機構と連携関係にある40社以上の企業が講義を担当。これらの講義はいわゆる基盤系の理論的なものとは異なり、産業界の各分野におけるデータサイエンス・AI技術の考え方や活用、また、企業におけるデータサイエンス・AIの実装など応用・実践的な知識や技術を学生が学ぶプログラムとなっている。
その領域も金融系、素材系、製薬系、IT系、建築系、電子機器系、重工業系、自動車系など、幅広い分野にわたっており、いずれの講義も第一線で活躍している研究・技術者たちが、世の中の激しい変化を生き抜く視点で実施している。「データサイエンスや人工知能への興味が拡がった」、「自身の研究と実際に企業で行われていることの関係性が理解できた」など、受講生からのフィードバックも多くある。
また、企業からの教育プログラムの提供だけでなく、学生が企業や研究機関など外部組織での就業体験を通して、データサイエンス・AIの知識を実践に活かして問題解決する能力を修得する「DS・AIインターンシップ科目」や、受講生の今後のキャリア設計に役立ててもらうことを目的として、企業と直接交流できる意見交換会「DS&AIフォーラム」などを実施することで、同学と企業とが互いに協力しあう体制を構築している。
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「データサイエンス・AI全学教育機構」の企業連携
【受験生へのメッセージ】
データサイエンス・AIは新たな可能性を切り拓く!
データサイエンス・AIは、あらゆる業界、研究分野で応用可能。そのため、「データサイエンス・AI全学教育機構」で専門的なスキルを身につけることができれば、新たな価値の創出やビジネス上の課題解決にも役立つはず。最後に、データサイエンス・AI全学教育機構長から、受験生へのメッセージをいただいた。
「データサイエンスとAIは未来を形づける鍵です。データは私たちの生活のあらゆる側面に関与し、AIは新たな可能性を切り拓きます。これらのスキルを修得することで、さまざまな分野の専門家と協力し、社会的な課題に対処する手段を身につけることができます。例えば、ビジネス戦略の策定、医療診断、環境保護など、AIとデータサイエンスは持続可能な未来への道を拓く助けとなります。データを分析し、パターンを発見する能力は、問題解決の鍵となり、効率性を高めてくれるはずです。高校生の皆さん、われわれと共に学びましょう」
※掲載情報は、2025年12月時点のものです。
Text by 丸茂健一(minimal)


