ITコンサルタント兼データサイエンティスト:システム開発やDXのプロジェクトを管理する仕事
コンサルティング本部
ITコンサルタント兼データサイエンティスト
IT(情報技術)によって、企業の課題を解決するのがITコンサルティング企業の仕事だ。ここでITコンサルタントをはじめとするさまざまな職業の人たちが働いている。アルサーガパートナーズ株式会社の長井俊樹さんは、ITコンサルタント、およびデータサイエンティストとして、顧客企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。はたしてどのような仕事なのだろうか?
ITコンサルタントってどんな仕事?
顧客企業の価値を向上する「攻めのDX」
DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく耳にするようになった。デジタルツールを駆使して、ビジネスや社会を変革する取り組みを指すようだが、具体的に何をしているのか理解している人は意外と少ないだろう。アルサーガパートナーズ株式会社のコンサルティング本部に所属する長井俊樹さんは、デジタル技術で顧客企業の売上や価値を向上する「攻めのDX」を担当しているという。詳しく聞いてみよう。
「現在、私はクライアント(顧客)である不動産企業の業務を支援するシステム導入プロジェクトを担当しています。ここでプロジェクトが滞りなく進むように管理するのが私の仕事です。最近はPMO(Project Management Office)と呼ばれることが多いですね。このプロジェクトにはPMOが3名参画しています。具体的な業務としては、顧客企業とシステム開発をするエンジニアとの橋渡しの役割を果たしています。まず、現場の課題をヒアリングし、DXの施策を提案、その費用対効果を提示し、導入が決まればその実行支援をします。目的は顧客企業の業務を改善し、扱う商材や企業ブランドの価値を高めること。つまり『攻めのDX』です。提案から導入まで一気通貫でDXのプロジェクトに携われる点がPMOの面白さだといえます」
Project Management Officeを直訳すると「プロジェクトを管理する部署」。最近はこれがPMOという職種になり、主にシステム開発やDXのプロジェクト推進を担当するエキスパート人材のことを指すようになっている。
長井さんが勤務するアルサーガパートナーズでは、顧客企業の業務効率化・コスト削減を目的としたシステム導入支援を行うプロジェクトも数多く存在する。こちらは、「守りのDX」と呼ばれる業務だという。一方、長井さんが取り組むのは「攻めのDX」。さまざまなデータを根拠として、顧客企業の売上が最大化される適切なタイミングで、適切なアクションをアドバイスする仕事だという。
「現在は、顧客企業が扱う不動産物件の価値を高める業務システムの導入を支援しています。具体的には、課題管理や帳票生成の自動化などを行うものです。システムは自社のエンジニアがオリジナルで開発しています。PMOは、自らプログラミングをする役割は担いません。むしろ、顧客企業の業界やビジネス内容を調べ、課題の本質を理解して、どのように改善するかを考えるようなスキルが求められます。上司は、『お客様の靴を履く』と表現していますが、まさに顧客企業の担当者と同じ目線で、課題と向き合う必要があります。現場の皆さんと徹底的に話し合い、課題を解決するシステムを提案し、それが導入され、喜んでもらえたときには大きなやりがいを感じますね」
学生時代は土木工学を学んでいた
長井さんは、アルサーガパートナーズに入社する前は、別のIT企業でデータサイエンティストとして働いていた。そこでは、エネルギー系のデータ分析を担当していたという。そこで入社後は、別の不動産企業の顧客データや購買データを分析し、営業の課題を設定する仕事に従事していた。データ分析のスキルは、PMOの業務でも大きな強みになっており、顧客企業に新たなシステム導入を提案する際の費用対効果をデータで示す際などに役立っているという。つまり、長井さんは、データサイエンティストのスキルを活かしたITコンサルタントだといえる。
そんな長井さんだが、学生時代からずっと情報工学やデータサイエンスを学んできたわけではない。実は、学生時代は土木工学を専攻し、大学院の修士課程まで研究を続けた。その後、新卒で建設業界の企業に就職し、道路設計などの仕事に従事していた。ただ、大学院時代からAIやデータサイエンスの可能性を感じ、独自に勉強を続けてきたという。きっかけは、大学院時代に親戚からITコンサルタントの仕事について教えてもらう機会があったから。テクノロジーを活用して、誰かに喜んでもらう仕事に魅力を感じたという。
「データサイエンスの知識は完全に独学です。もともと理系だったので、数学の基礎的な知識はありました。さらに、大学院の研究で、Pythonを使ったプログラミングや機械学習もかじっていたので、データサイエンスを学ぶ基礎はできていました。新卒で就職した企業では、とにかく早く仕事を終わらせて、自宅でAIやデータサイエンスについて学ぶのをモチベーションにしていました(笑)。独学ながら、SIGNATE(シグネイト)と呼ばれるデータサイエンスのコンテストに応募し、銅メダルをもらったりしていましたね」
独学でデータサイエンスのコンテストに入賞してしまうとは驚きだが、勇気をもらえるエピソードでもある。SIGNATEは、株式会社SIGNATEが運営するデータサイエンスのコンペティションで、高校生や大学生も参加できる大会もあるという。
ITコンサルタントに求められる資質とは?
プログラミングの知識より大切なのは「仮説を立てる力」
独学でAIやデータサイエンスについて学んだ長井さんは、転職でデータサイエンティストになる夢を叶え、さらにIT企業でDX支援を行うという現在のポジションを得るに至った。そんな長井さんに、データサイエンスを職業にするために必要な資質を聞くとこんな答えが返ってきた。
データサイエンスを仕事にしたいなら、まず、Pythonなどのプログラミング言語の知識は当然あったほうがいい。さらに、ChatGPTのような生成AIを使いこなすようなスキルも必要になる。ただ、本当に必要なのは、ビジネスの本質を理解して、取得したデータを顧客企業の課題解決にどう活かすかを考える力。ここで求められるのが、『仮説を立てる力』だという。
「例えば、データサイエンティストとして、不動産物件の価格予測をするAIモデルの開発に携わったとします。ミッションは2つ。1つはAIモデルの精度を上げること。こちらはデータ分析をするための統計学や応用数学の知識が問われます。2つ目はそもそもなんでこのAIモデルを開発するのかを定義すること。ここで求められるのが、ビジネスの本質を理解する力です。都心のマンション物件の価格を予測する場合、そのエリアの公示地価、駅からの距離、階数、面積などさまざまなデータが必要になります。ここで、集めたデータからどのような予測ができるかという仮説を立てる。これは生成AIに聞いてもわかりません。この仮説を立てる部分こそが、最後に人間が担う領域なのです」
AI時代は若者にとってチャンスの宝庫!
学生時代はサッカーばかりしていたという長井さん。そこで培われた武器もあるという。それは、メモを取って言語化すること。自分が最高のパフォーマンスを発揮するために、メモを取り、それを確実に実現する習慣をつけてきたことが今の仕事でも活かされているという。確かにこれは、目的を明確化し、仮説を立てて、確実に実行するという今の仕事にも通じるような気がする。
ITコンサルタント、データサイエンティストと新しい時代の仕事をしながら、さらに進化を続ける長井さん。最後に、この業界を目指す後輩たちへメッセージをいただいた。
「ITの仕事は専門性が高く、ハードルも高いと感じるかもしれません。私自身も大学・大学院のバックグラウンドは土木系で、新卒のときはIT企業に就職できませんでした。それでも独学でデータ分析や機械学習を学び、現在の職業に就くことができました。テクノロジーの力で誰かに喜んでもらいたい。そういう強い気持ちがあれば、いくらでも道は拓けると思います。むしろ、AI時代は、若者にとって大きなチャンスだといえます。ぜひAIやプログラミングに興味があるなら、積極的にチャレンジしてみてください!」
【取材協力】
アルサーガパートナーズ株式会社
DX領域において、コンサルティングからシステム開発、運用までを一貫して行う。事業領域は、DXからWebシステム開発、アプリ開発、Webマーケティングまで多岐にわたる。社名のアルサーガパートナーズは、「技術・芸術(=ars)の力で、デジタルの物語(=saga)を、パートナーシップを以て紡いでいく」という意味。“日本のDXを世界で誇れる産業へ”というビジョンのもと、国内生産、国内IT人材の育成に携わることで、社会課題の解決に取り組んでいる。
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アルサーガパートナーズ株式会社
Text & Photo by 丸茂健一(minimal)