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【武蔵大学】高等教育におけるAI活用の未来像|論理的思考力はAI時代の基礎体力になる 【武蔵大学】高等教育におけるAI活用の未来像|論理的思考力はAI時代の基礎体力になる

【武蔵大学】高等教育におけるAI活用の未来像|論理的思考力はAI時代の基礎体力になる

東郷 賢 教授
東郷 賢 教授
TOGO Ken
武蔵大学
副学長
国際教養学部

AI時代の人材には、どのような資質が求められるのかーー。
ロンドン大学と提携した世界水準の教育プログラムを推進する武蔵大学国際教養学部の東郷賢教授に最新動向を聞いた。

ロンドン大学とともに
実現するAI時代の高等教育

武蔵大学国際教養学部では、名門ロンドン大学の授業を日本で教育し、両大学の学位取得を目指すパラレル・ディグリー・プログラム(PDP)を実施しています。私たちの教えている授業は、ロンドン大学のカレッジのひとつロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)が学術監修をしており、LSEは世界で最もAIを積極的に採用している大学のひとつです。LSEでは、Anthropicの大規模言語モデル「Claude(クロード)」をすべての教員と職員、学生に無料で配布しています。すでに、AIを積極的に高等教育へ活用していくことを実践しているわけです。LSEで学んだ卒業生たちが、AIを有効活用してビジネスの現場で活躍するために、この方針を取り入れているのです。

AIを積極的に導入することで、教員もそれに応じた対応を求められます。例えば、提出された論文を評価する際に、学生自身が書いた論文なのか、AIに書かせた論文なのかがわからなくなる場合があります。それを確認するために、LSEではリサーチジャーナルを授業の初日から書かせて、教員が確認したり、論文執筆の途中段階で研究手法などを問う小規模な口頭試問を行ったりしています。それは、成果物だけではなく、その過程も含めた包括的な評価がより重要になるということです。

AI時代の高等教育機関の評価方法

こうした評価システムはゼミによる少人数教育を重視してきた武蔵大学の教育との親和性が極めて高いと考えます。AIは24時間対応してくれる家庭教師のようなものですから、学生は意欲があればいくらでも勉強できるし、教員も学生の学習状況を確認しながらサポートします。この両輪が揃うことがAI時代の高等教育のあるべき姿だと思います。

国際教養学部でも、LSEが実践している最先端のメソッドを可能な限り活用しています。私のゼミでも学生に対してAIの積極活用を推奨しつつ、それぞれの活用法をゼミ内の公共知にしています。個人的には、AI活用にネガティブな印象は一切なく、非常にエキサイティングな時代がやってきたと思っています。

PDPには、「データサイエンス&ビジネスアナリティクス学士号」を目指すプログラムがあり、私はその中で「ビジネスアナリティクス」の授業を受け持っています。これは統計学をビジネスの領域に活用するためのスキルを習得するための講義です。そこでは例えば、eコマースの顧客の氏名、住所、購入履歴などのデータ1万件近くを渡し、データの解析や可視化のできるツール「Tableau」を使用して上司に提出する提案レポートを作成する課題を出します。提案内容は自由ですが、それが論理的かつ授業で得た知識を反映したものであることを評価のうえでは重視します。さらに、「Tableau」を活用して論点が簡潔に伝わり相手を説得できるレポートをつくる必要もあります。将来コンサルタントなどを目指している学生にとってはよいトレーニングになるはずです。

AI時代に求められる
4つの人材像と論理的思考力

AIの普及により淘汰されるポジションは今後も増えていくと思いますが、私はこれからの時代は次の4つのタイプの人材が活躍できると考えております。

1つ目が「ビジョンを描き0→1を創造できる人材」です。するべきことを思い描くことのできる人はゼロをイチにできます。なおかつ、そうしたビジョンを伝えることで人を説得したり、協力して物事を成し遂げたりできる能力があれば、今後は最も評価されると思います。

2つ目は「AIで自分の生産性を上げられる人材」です。AIを活用して50倍のアウトプットを出すような仕事をできれば、ゼロからイチにしたアイデアを無限に拡張できます。

3つ目が「AI活用を組織に展開できる人材」です。AIを活用して、自分の生産性を高めるだけではなく、そうしたノウハウを普及させられる人は貴重です。例えば、会社のある部署で1人の社員がAIを活用して生産性を上げた際、そのノウハウを共有すれば部署全体の生産性向上につながります。

4つ目は「共感力が高く人に寄り添える人材」です。いわゆるEQ(Emotional Intelligence Quotient/心の知能指数)が高く人に寄り添える人、近くにいるとすごく安心できるような人を指します。

AI時代に生き残れる人材の4つの条件

AIが最も得意なことは指示を受けて過去の経験から正解を導くことです。過去の事例を探して正解を探す業務はAIの方が長けているため、今後は人間に求められるスキルではなくなっていくでしょう。従って人がするべきこととしては創造的な仕事しか残らないと思います。

もうひとつ重要なのが「論理的思考力」です。これがすべての土台になると言っても過言ではありません。私のゼミでは過去25年間、まず初めに東京大学の野矢茂樹先生が書かれた『論理トレーニング』を教科書に論証構造を学ばせます。そこで論理的思考を十分に学んだうえで、統計解析言語Rの開発環境「RStudio」や「Tableau」などのツールを活用しながらデータ分析や論文執筆をさせています。AIの能力が高くなるほど、それを使用する人間の能力も向上しなければ、AIを十分に使いこなすことができません。論理的思考力は今後ますます重要になるはずです。

世界水準で学べる環境を
さらに進化させていく

そうした能力はAIから得た情報を検証する力にもつながります。LSEが作成しているPDPの試験問題は、テンプレートの正解を問うのではなく、それまで学んだ知識を活用しながら答えを能動的に論述するスキルが問われる内容となっています。従来もそうした資質は世の中で活躍するために必要でしたが、今後はそれがAIによってさらに強化されるでしょう。

国際教養学部は、それらを学ぶ理想的な場所です。私たちはロンドン大学・LSEと連携し、世界中から集まった教員たちと情報交換をしながらカリキュラムをアップデートし続けています。世界水準で学べる環境をさらに進化させていくのが私の使命だと考えています。

東郷 賢 教授

プロフィール

東郷 賢
武蔵大学 副学長
国際教養学部教授

1986年 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年 米イエール大学大学院国際開発経済学修士号(M.A.)取得。1996年 同大学院経済学博士号(Ph.D.)取得。1998年より武蔵大学で教職に就き、経済学部教授、学長補佐、国際教養学部長を経て、2026年より副学長就任。

Text by 高橋ミレイ/Photo by 荒熊流星

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