中高生対象のAI開発ハッカソン「AI HACK FOR TEENS」開催レポート!
ChatGPTに代表される生成AIの登場により、人工知能(AI)を誰もが活用する未来が現実味を帯びてきた。今や中高生でも気軽に生成AIに触れ、イノベーションを生み出せる時代になっている。次世代の若者たちは、AIをどのように活用していくことになるのか。そのヒントを探りに、ライフイズテックが主催するAI開発ハッカソンに潜入してきた。
生成AIを使ったWebサービスをチームで開発し発表する
2024年のゴールデンウィークにあたる5月3日(金)〜6日(月)に、中高生を対象にしたAI開発ハッカソン「AI HACK FOR TEENS」が開催された。主催は、中高生向けプログラミング教育サービス事業を手がけるライフイズテック株式会社。ハッカソンとは、プログラムの改良を意味する「HACK(ハック)」と「MARATHON(マラソン)」をかけ合わせた造語で、チームによる開発を競うイベントという意味で使われる。
今回の「AI HACK FOR TEENS」は、4日間で生成AIを使ったWebサービスやゲームをチームで開発し、発表・発信するプロジェクト。 1日目は生成AIワークショップや企画ワークショップを通して、生成AIでできること、企画の立て方、発表の仕方を学んでいく。2〜3日目はチームに分かれてサービス開発に集中する。参加した中高生は、ほぼ全員がチーム開発未経験。そこでチーム内の役割分担や進捗管理、情報共有のやり方などもここで学んでいく。そして、最終日は開発したWebサービスやゲームの発表。各チームで説明スライドを作成し、当日に臨んだ。
生成AIを高度に連携させた4作品が最終発表へ
最終日の発表に進出したのは計4チーム。Unityゲーム1作品とWebサービス3作品の計4作品となった。では、作品をひとつずつ紹介していこう。
■Aチーム 作品名「ピッタグラム」
まず、Aチームの作品は「ピッタグラム」。OpenAIの画像生成AI「DALL-E(ダリ)」を使って、ピクトグラムを自動生成し、画面に表示。その際のプロンプト(命令)文をクイズ形式で当てるというゲームだ。自動生成されたピクトグラムを見て、ユーザーが解答を入力するとChatGPTがそのテキストがどれくらい正答に近いかを採点してくれる。ゲーム開発ツールUnityにChatGPTとDALL-Eを組み込むという開発難度の高い作品だ。
■Bチーム 作品名「あそぷら」
続いて、Bチームの作品名は「あそぷら」。生成AIが友達との遊びのプランを考えてくれるWebサービスだ。ユーザーがその日の気分に合わせて提示された「カフェ巡り」「映画鑑賞」などの条件を選ぶと、ChatGPTが「表参道カフェ巡り」「神保町古書店巡り」といったプランを自動生成してくれる。その際、プランに合わせたイメージ画像も自動生成される。ユーザーはまず、自分に合うキャラクターを予め用意された6タイプから選ぶ。そのキャラクターの志向と目的の条件をかけ合わせたプランが出力される仕組みだ。テキスト&画像生成というChatGPTの機能をフル活用したサービスだといえる。
■Cチーム 「CATECHO」(かてちょ)
Cチームの作品名は「CATECHO」。友達と遊ぶ際の日程を“勝手に調整”してくれるWebサービス。サイトにログインし、友達を探すだけで、お互いの予定の合う時間帯が自動的に複数表示される。APIを使用して、Google カレンダーから自動で取得した互いの予定に合わせて、ChatGPTが都合の良い時間帯を割り出す仕組みだ。これがあれば、カレンダーで自分の予定を確認し、空いている時間帯を送るという面倒な作業がなくなる。APIを使って、AIとGoogle カレンダーを連携させている点がポイントになるだろう。
※API=Application Programming Interfaceの略。異なるシステム間でアプリケーションを連携する際に使用するプログラムのこと。
■Dチーム 「PRA.COM」(ぷらどっとこむ)
Dチームの作品は、生成AIを使用したゲーム感覚の会話練習アプリケーション。チャットを入力すると自動でその属性を模した返信があり、会話を続けることができる。「PRA.COM」は、PRACTICE × COMMUNICATIONが由来だ。会話の様子は、ChatGPTによって採点され、改善点を含めたレビューが表示される。相手はAIなので、恥ずかしがらずに何度でもトライできるのがポイントだ。ユーザーの入力テキストに合わせた会話相手の人格を自動生成し、会話データをスコア化するところで生成AIが活用されている。
各チームはゲームやWebサービスの開発、発表だけでなく、X(旧Twitter)を通じて、作品の内容を一般ユーザーに発信し、その反応コメントを開発に活かしたりする経験もできた。多いチームは、Xの投稿に対し、6,000以上のインプレッションを集めたという。
【参加者の声】
めとろさん(高校1年生/Dチーム)
「ライフイズテックでAndroidアプリ開発のコースに3年間通っています。それでもHTMLやRubyといったWeb開発用の言語は、半年くらいしか学んでおらず、参加するまでは不安でした。でも、結果的に生成AIを使ったWebアプリケーションを完成させることができ、大きな自信になりました」
みずきさん(高校2年生/Cチーム)
「ライフイズテックでWebサービス、Webデザインのコースに計3年ほど通っています。生成AIを組み合わせて、Webサービスの開発をするのは初めてでしたが、意外とカンタンだぞという手応えを得ました。生成AIはプログラミングのコードなども生成できます。生成AIを使いこなすためのプロンプトの手法に興味が出てきました」
チームで開発をした経験を将来の活動に活かしてほしい
4日間を終え、プログラム運営を統括したライフイズテックのメンバーサクセス事業部LXグループの江口諒さんはこう語る。
「AI HACK FOR TEENSの目的は、次世代のコアイノベーターの育成・輩出です。それは、世の中の課題を見つけて、それを解決するプログラムを実装し、社会にインパクトを与えられる人材です。生成AIのことは知っているけれど、触ったことがない……という中高生にも『できることからやってみよう』という機会を与え、AIを自分ごとにしてもらいたい。手を動かして、アプリケーションなどを形にしていくことで、AIはどんどん身近なものになっていくはずです。また、チームで開発を行う点も今回の大きな狙いです。仲間と一緒に、強みを活かし、苦手を補い合って、ひとつのプロダクトを創り上げた経験を、今後のあらゆる活動に活かしてほしいと思います」
ライフイズテックでは、夏休み期間中に開催する「ライフイズテック サマーキャンプ2024」でも、ChatGPTやStable Diffusionを活用してUnityゲームを制作し、AIと協創する方法を学ぶAIコースを開催する予定。全コースを通じて生成AIを体感できるアクティビティを実施する計画だという。詳細は以下より。
詳細はこちら
ライフイズテック サマーキャンプ2024
- ■AI HACK FOR TEENS概要
- 日程:2024年5月3日(金・祝)〜 5月6日(月・祝)
- 対象:ライフイズテック スクールに参加経験のある13歳以上の中学生・高校生
- 詳細:https://life-is-tech-ms.studio.site/aihackforteens
取材協力
Life is Tech ! (ライフイズテック)
中学生・高校生〜社会人向けのIT・プログラミング教育サービス。2010年にスタートし、これまで100万人以上にデジタルを活用したイノベーション教育を届けている。
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Life is Tech ! (ライフイズテック)
Text & Photo by 編集部