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【金沢工業大学】データサイエンス系課外プロジェクト「Data Dreamers」とは? 【金沢工業大学】データサイエンス系課外プロジェクト「Data Dreamers」とは?

【金沢工業大学】データサイエンス系課外プロジェクト「Data Dreamers」とは?

増田 圭亮 さん
増田 圭亮 さん
Masuta Keisuke
金沢工業大学大学院
情報工学専攻1年
山本知仁 研究室

データサイエンス系大学・学部に通う先輩は、どのような学び&研究に取り組んでいるの? 今回話を聞いたのは、金沢工業大学大学院情報工学専攻に所属しながら、データサイエンス系課外プロジェクト「Data Dreamers」の代表を務める増田圭亮さん。どのような活動をしているのだろうか。

データサイエンティストの育成を目指し、「Data Dreamers」を立ち上げ。

——「Data Dreamers」の活動内容を教えてください!

金沢工業大学初のデータサイエンス系課外プロジェクトとして発足した「Data Dreamers」は、2つの軸で活動を行なっています。

1つ目は、「データ分析技術向上の機会を得られる場の構築」です。データサイエンス系の知識を幅広く学べる「東京大学グローバル消費インテリジェンス寄附講座」(全15回)というオンラインプログラムを受講したり、Signate,Kaggleなどの機械学習コンペティションに出場したりして、データ分析のスキルを身につけていきます。

最近では、5名×3チームの合計15名が「Azure OpenAI Service 大学生向けハッカソン」に参加していました。テーマとしては、学生の学習をサポート、もしくはプログラマーの開発作業を支援するアプリケーションを作成するというものです。予選が実施され、53チームから3チームが決勝に進出するのですが、そのうち2チームが「Data Dreamers」のチームでした。さらに、私のチームは優勝することもでき、「Data Dreamers」の取り組みの成果が証明されたようで嬉しかったですね。同じ目標を持つ仲間が多くいるため、仲間集めに困らないことが団体に所属する上でのメリットだと思います。

Data Dreamers

2つ目は、「実データを扱った社会課題の解決」です。例えば、金沢工業大学近郊にある地方自治体のオープンデータを駆使して、若者の都市圏流出の原因を探ってみたり、その地域や地方自治体がどのような特性を持った組織なのかを数値として表現したりしています。また、「マナビDXクエスト」というデジタル推進人材育成プログラムにも積極的に参加し、地域の企業と連携して課題解決を行うなど、実践的なスキルの習得も目指しています。

これらの活動を通して、社会課題を解決できるデータサイエンティストを育成することが「Data Dreamers」の目標となります。現在、学部1年から博士課程まで約50名が在籍しており、金融データの分析やWebコンテンツのアクセス解析などに取り組んでいるメンバーもいます。

——幅広い活動を行なっているのですね。団体発足のきっかけは何だったのですか?

「Data Dreamers」が誕生したのは、金沢工業大学の産学協同教育「KITコーオプ教育プログラム」の一環で、2023年の8月から11月までの約4か月間、NTT西日本の社員としてデータサイエンスの業務に携わったことがきっかけです。具体的には、NTT西日本グループのNTTマーケティングアクトProCXという企業で、VOC分析の業務を担当しました。これは、アンケートやチャットボットなどのデータを活用した顧客分析ですね。

「KITコーオプ教育プログラム」成果発表会の様子
「KITコーオプ教育プログラム」成果発表会の様子

クライアントへのヒアリングを実施し、課題を顕在化させた上でデータ分析を行いました。トータルで30社ほどの打ち合わせに参加したと思います。これまではプログラミングやデータサイエンスがビジネスとしてどのように活用されるのかを理解できていなかったのですが、一連の実務を経験できたことで課題解決の本質のようなものを理解できたように感じています。技術面ではなく、ビジネス面を経験できたことが大きな収穫でしたね。

しかし、このNTT西日本との取り組みに参加できたのは、私を含めて2名だけでした。もちろん参加者を受け入れる体制構築など難しい部分もあったとは思うのですが、体験できる人数が少なすぎる。社会に根差したデータサイエンティストを育成するという素晴らしい狙いがあっただけに、もったいないと感じました。それなら自分たちでやってみようと考え、NTT西日本のプロジェクトに参加した睦田駿弥さんと一緒に「Data Dreamers」を立ち上げました。現在、睦田さんは海外研修「ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ」の派遣生としてヨーロッパ研修に参加しています。

立ち上げ時の集合写真
「Data Dreamers」立ち上げ時の集合写真。一番右が陸田さん、その隣が増田さん

「教育DX」で退学者を減らしたい。

——現在、増田さんが取り組んでいる研究について教えてください。

金沢工業大学では、「学生一人ひとりの学びに応じた教育実践」や「時間と場所の制約を超えた学びの場の創出」を目指した「教育DX」の取り組みが実践されているのですが、私もそれに挑戦しています。具体的なテーマとしては、退学者予測の研究を行なっています。学生の出席状況や成績データ、入試の点数などはこれまで各部署で管理されていたのですが、「教育DX」によってクラウドにまとめて管理できるようになりました。そのため、データの利活用は容易になってきており、データサイエンスの重要性もさらに高まっていくはずです。

教育DX」で退学者を減らしたい

——研究の課題はどんなところにありますか?

学生の課題提出状況のデータに注目して予測を行なっているのですが、速度的な部分で課題があります。例えば、1学期が終わった後に、それらのデータを用いて分析を行ったとしても、もう単位を取得できないことは確定してしまっているので、2学期以降に退学することは避けられないのです。既に手遅れになっている場合が多い。そのため、モニタリング機能を加えるなど、よりタイムリーに分析を行っていく必要があると考えています。課題の提出状況が芳しくない場合には、アラームを出せるようなシステムを構築できるといいですね。

データサイエンティストとして活躍できる場所に送り出すことが重要。

——「Data Dreamers」の今後の展望を教えてください。

団体としては、ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力という3つの力を身につけ、データサイエンティストとしての総合力を鍛えること。そして、そのスキルを活かせるような場所に送り出すことを目標にしています。

データサイエンティストとしての総合力を鍛える

そのため、「Data Dreamers」の先輩やOBを招いて、交流会を開いたり、講演をしてもらったりすることで、知見を共有していこうと考えています。就職活動のノウハウなども後輩に伝えていけるといいですね。最終的な目標は、課題解決できるデータサイエンティストが社会で活躍すること。データサイエンティストとしての理想像を明確にするための体制を構築していきたいです。

データサイエンティストとしての理想像を明確

——最後に、情報系・データサイエンス系の学びや「Data Dreamers」に興味がある受験生にメッセージを!

金沢工業大学では、アカデミックなテーマで活動する「学科プロジェクト」や本格的なモノづくりに取り組む「夢考房プロジェクト」など、さまざまな課外プロジェクトが学生主体で行われています。「Data Dreamers」の活動もその一環です。
詳細はこちら
夢考房 -YUMEKOBO- | 金沢工業大学

私も大学生1、2年生の頃は授業に出席してアルバイトをしてという普通の学生でした。しかし、2年生の冬休みに株式取引を自動化できるツールを開発できたら面白いのではないかと思い立ったことをきっかけに、主体的にプログラミングの勉強をしたり、データサイエンスの本を読んだりするようになりました。受験生の皆さんも情報・データサイエンス系の学びと自分の興味のある分野を組み合わせると、楽しく取り組めるものがあるかもしれません。これは現在、大学生の方も同じですね。そのようなものが見つからなかったら、ぜひ「Data Dreamers」に遊びにきてください。主体的に取り組んでみたいという思いさえあれば、夢中になれるものが見つかるはずです。

Data Dreamers

取材協力

金沢工業大学「Data Dreamers」

大学初のデータサイエンス系課外プロジェクトとして、2023年に発足。学部1年から博士課程まで約50名が在籍し、オープンデータを駆使した社会課題の解決、金融分析、スポーツ分析など幅広いテーマで活動が行われている。上位進出を狙い、積極的にコンテストにも参加。2023年から2024年にわたって開催された「Azure OpenAI Service 大学生向けハッカソン」では、2チームが決勝に進出。増田さんがテックリードを務めるチーム「Data Dreamers caffeine coder」は優勝を果たした。

Text by 仲里陽平(minimal)

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