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【亜細亜大学】音楽や言語の構造をデータで「見える化」する 【亜細亜大学】音楽や言語の構造をデータで「見える化」する

【亜細亜大学】音楽や言語の構造をデータで「見える化」する

亜細亜大学経営学部
データサイエンス学科

東条 敏 教授
TOJO Satoshi
亜細亜大学経営学部
データサイエンス学科
専門:知能情報学

文系学部のデータサイエンス学科では、どのような学びが展開されているの? 今回は、2023年4月に新設された亜細亜大学経営学部データサイエンス学科をクローズアップ! 「知能情報学」を専門とする東条敏教授は、人間が話す自然言語の構造解析のノウハウを音楽のメカニズム解析に応用する研究に取り組んでいる。いずれは、学生と一緒にAIを用いた作詞・作曲などにも挑戦したいと語る東条教授が目指す文理融合のデータサイエンスとは?

モーツァルトが確立した楽曲パターンを解析する

「天才音楽家と呼ばれるモーツァルトは18世紀に、現代にも通じる音楽の典型パターンを確立しました。最近のJ-POPもK-POPも大きな分類ではこの典型パターンに当てはまります。それを大量の楽曲データから明らかにしています」

そう語るのは、亜細亜大学経営学部データサイエンス学科の東条敏教授だ。専門は計算機(コンピュータ)を用いた自然言語の構造解析。文章の構造を調べるデータサイエンスの手法は、音楽の構造を解析する研究にも応用できるという。

「私の専門である論理学を基盤とした自然言語処理とは、人間の言葉を『文法』と呼ばれる論理表現に置き換える作業を指します。こうした文法構造は、もともと人間の頭の中にあり、これは音楽にも当てはまるのではないかと考えられています。その証拠に言語と音楽は、前頭葉にあるブローカ野、側頭葉にあるウェルニッケ野という脳の同じ部位で処理されます。つまり、音楽にも言語同様のパターンやルールがあって然るべきなのです」

音楽の構造解析について、少しだけ踏み込んでみよう。東条教授曰く、音楽にも言語同様の「係り受け構造」があるという。これは、「主語」の次に「述語」が来る、「形容詞」の次に「名詞」が来る……といったルールのことを指す。同様に、各国・各時代の楽曲データを詳しく調べてみるとスタートはこうで、終わりに向けてこうなる……といったパターンが見えてくるのだとか。

「例えば、代表的な和音である『ソシレ』の次には、『ドミソ』が来るといった係り受け構造が楽曲にも見受けられます。これを古典的な音楽理論だけでなく、最新のAI(人工知能)技術などを使って、さらに解析し、『見える化』したら面白いと思いませんか? 私は理化学研究所などと共同で、こうした音楽の構造解析の研究に長く取り組んできました。研究のノウハウを用いて、今後は学生と一緒にAIを用いた作詞・作曲などにも挑戦してみたいと考えています」

学生と一緒にAIを用いた作詞・作曲などにも挑戦

日本における「AIの父」から学んだ学部時代

東条教授は、東京大学大学院工学系研究科で、博士課程までAIのベースとなる知能情報学の研究に取り組み、その後、北陸先端科学技術大学院大学で教員を務めてきた。東京大学在学中には、話題のディープラーニング(深層学習)の技術を支える「ニューラルネットワーク」の数学的理論を考案したパイオニアのひとりで、日本における「AIの父」と称される甘利俊一東京大学名誉教授から学んだ経験もあるという。そんな東条教授は、文系の亜細亜大学経営学部で、データサイエンス教育の新たな挑戦に乗り出した。

「もはや文系・理系を分ける時代ではありません。文系でもデータを扱う時代なのは、現在の大手企業の仕事を見れば明らかです。そういう場所で活躍するためには、基礎的な数学とコンピュータの言語を学ぶ必要があります。コンピュータとは、つまり計算機です。AI時代になってもできるのは、データを集めて、回帰か分類をするだけです。回帰とは一般化・予測と訳してもいいでしょう。この仕組みを理解して、どうすればよりうまくコンピュータに命令できるか、より効率的にデータを活用できるかを考えるのがデータサイエンスの学びなのです」

コンピューターがやっていること

大量の部分データを集めて、全体を「見える化」する

インターネットの発展に伴い、ここ10〜20年で大量のデータが手軽に、かつ無料で入手できるようになった。東条教授が知能情報学の研究に取り組んでいた1980〜90年代には考えられないような恵まれた状況だという。

東条教授曰く、データサイエンスとは、データというランダムな文字列から抽象的な情報を取り出す手法のこと。授業でも使っているというゾウのイラストを使った解説がわかりやすい。

全体を「見える化」

巨大なゾウを調べることになった研究者たちは、ある人は「これはヤリだ」、ある人は「これは壁だ」という。それらの部分的な情報を集めることで、やっとゾウとはどういう生き物なのかがわかってくる。ビッグデータ解析とは、まさにこういうことで、大量の部分データを集めて、計算によって回帰(一般化)することで、全体を「見える化」できるのだという。

大量の部分データを集めて、全体を「見える化」する

「これはまさにAIの機械学習がやっていることと同様です。上図の通り、(1)が真の分布、つまりゾウの実体であれば、(2)でさまざまなゾウの部分データを集め、(3)で計算によって予測・一般化し、(4)で誤差を調整して、実体に近づけるわけです。計算機(コンピュータ)がやっているのは、こういうことなのです」

身につけてほしいのは、『問いを立てる力』

東条教授が所属する亜細亜大学経営学部データサイエンス学科では、前述のような「分析力」に加え、「創造力」「経営力」という3つの力を鍛えることで、データサイエンティスト、クリエイター、デジタルコーディネーターなど、さまざまな将来像を描ける人材を育成している。データサイエンスとビジネスを融合した新しい学びが特色だといえるだろう。

最後に東条教授から受験生へのアドバイスをいただいた。

「データを扱う手法を学ぶ上で、最終的に身につけてほしいのは、『問いを立てる力』です。音楽でもスポーツでもファッションでもいい。普段、当たり前と思っている身の回りの現象に疑問を持つことが何より大切です。それを明らかにするためにどのようなデータを集めればいいか、どのような解析手法があるかを亜細亜大学経営学部データサイエンス学科で学んでほしいと思います。ここで身につけた力は、データサイエンティストだけでなく、将来あらゆる職業で役立つと思います」

プロフィール

東条 敏
亜細亜大学経営学部データサイエンス学科 教授

東京大学大学院工学系研究科修了。博士(工学)。株式会社三菱総合研究所人工知能室長、北陸先端科学技術大学院大学情報科学系教授などを経て現職。専門は知能情報学、自然言語処理、エージェント・コミュニケーション。近年は、文法理論に基づく楽曲解析の研究にも取り組んでいる。
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教員情報 東条 敏

Text by 丸茂健一(minimal)/Illustration by 竹田匡志

UNIVERSITY INFO

亜細亜大学経営学部データサイエンス学科
ASIA UNIVERSITY
Faculty of Business Administration
Department of Data Science
デジタル技術と経営マインドを兼ね備えたDX人材を育成
亜細亜大学経営学部データサイエンス学科
デジタル技術と経営マインドを兼ね備えたDX人材を育成

「分析力」「創造力」「経営力」を養成

グローバル教育で知られる亜細亜大学は、2023年4月に、経営学部データサイエンス学科を開設。数字やデータを収集して情報化する「分析力」、革新的なサービスを生み出す「創造力」、得られた情報をビジネスにつなげる「経営力」を兼ね備えたDX人材を育成している。

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