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【明治大学】「数理科学」と「情報技術」で実社会の課題に挑む 【明治大学】「数理科学」と「情報技術」で実社会の課題に挑む

【明治大学】「数理科学」と「情報技術」で実社会の課題に挑む

明治大学総合数理学部

中村 和幸 教授
中村 和幸 教授
NAKAMURA Kazuyuki
明治大学
総合数理学部
国際社会で活躍できる強い「個」を育てる教育で知られる明治大学は、全10学部を擁する総合大学。ここでデータサイエンス教育の拠点となるのが、中野キャンパスにある総合数理学部だ。数理科学と情報技術に特化した独自の教育・研究について、総合数理学部の中村和幸教授に詳しく聞いた。

データサイエンスの根幹は「数理科学」

受験生ならば誰もが知る私立の名門・明治大学。「AI」「データサイエンス」の文脈で、あまり目にしない印象だが、実は全学的にかなり高度なデータサイエンスの教育・研究が展開されている。明治大学におけるデータサイエンス教育の主な拠点となるのが、2013年に中野キャンパスに開設された総合数理学部だ。「社会に貢献する数理科学の創造・展開・発信」を理念に掲げ、数理と情報についての先端的知識と技術で現代社会の諸問題に対処し、国際的に活躍できる人材を育成している。

中野キャンパスの外観
明治大学中野キャンパスの外観

「総合数理学部の基盤になるのは数学です。私は、現在語られるデータサイエンスと数学の関係は、自動車と物理学の関係に近いと思っています。自動車を自在に操って、日々のタスクをこなす人は数多くいますが、エンジンの構造を知る人は極めて少ない。これを詳しく知るには、熱力学や機械力学など物理学の高度な知識が必要になります。同様にChatGPTなどの生成AIを自在に使いこなせる人は増えていますが、全員がプログラミング言語や機械学習の理論を理解しているわけではないですよね。AI時代の先端技術を支える数学の理論を深く理解し、AI・データサイエンスを使いこなすだけでなく、これらを駆使して新たな価値を創造できる人材を育成するのが、総合数理学部の使命だと考えています」

そう語るのは、明治大学総合数理学部の中村和幸教授だ。所属は現象数理学科で、統計科学、ベイズ型データ解析などを専門としている。

総合数理学部

総合数理学部には、3つの学科がある。あらゆる自然現象や社会問題を数学の力で解明する「現象数理学科」、人間を中心としたコンピュータサイエンスと、それを支える数学について学ぶ「先端メディアサイエンス学科」、次世代のネットワークを考え、効率的・経済的なシステムやスマートな社会を創造する「ネットワークデザイン学科」だ。いずれも数理科学と情報技術を基盤として学び、1年次から演習(ゼミナール)形式の少人数制授業を経験。学生が主体的に参加するアクティブラーニング形式の授業を推進している。

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明治大学総合数理学部コンセプトムービー

明治大学総合数理学部紹介ムービー

データサイエンスの基盤となるのは、統計学や応用数学だ。これらの理論から導き出した方法を駆使して、自然科学から社会科学に至る幅広い課題を解決するのが目的だ。「AI」「データサイエンス」というキーワードが付いていないため見逃されがちだが、「数理科学」を旗印とするこうした学部こそ、真のデータサイエンス系学部といえるのかもしれない。では、さっそく3学科の学びを詳しく見ていこう。

明治大学総合数理学部の3学科

明治大学総合数理学部の3学科

モノ・コトが現れる理由を数学で解明する「現象数理学科」

授業風景

高度な数学を用いて、この世界のさまざまな現象を解明するのが現象数理学科の学び。対象は、動物や植物の美しい模様、心臓の拍動、地震・津波の動き、交通渋滞、景気の動きなど多岐にわたる。これらの現象に隠された数理問題を抽出し、数理科学とデータサイエンスを駆使して解決する力を養成している。金融、マーケティング、医療、農業、工場のオペレーションなど応用分野も幅広く、実社会に密接している学びである点も特色だ。
取材に対応いただいた中村教授は、現象数理学科所属で、「実験データ解析演習」(後述)などを担当している。

世界にまだないモノ・コトを実現する「先端メディアサイエンス学科」

授業風景

情報科学をベースに、まだ誰も経験したことのないモノ・コトの実現を目指すのが先端メディアサイエンス学科の学び。よりコンピュータサイエンス寄りの学びが特色だ。目的は、“未来のコンピュータ(先端メディア)”の在り方を考えること。最先端の機械学習やディープラーニングVRなどの技術を実践的に学べるのが特色だ。エンタメに特化したデータ分析や映像作品の制作に挑戦する「エンタテインメントプラグラミング演習」などが人気。微弱な電流で味覚を拡張する箸やフォークの開発で2023年の「イグ・ノーベル賞」を受賞した宮下芳明教授もこの学科に在籍している。

IoT+AIでスマートな社会をつくる「ネットワークデザイン学科」

ネットワークデザイン学科

現代社会におけるさまざまなモノ・コトの“つながり”を扱うのがネットワークデザイン学科の学び。電力網、交通網、インターネットなど、私たちの生活を支えるさまざまなネットワークシステムが研究対象となる。工学的諸問題を数理的手法で解決する「数理工学」と呼ばれる研究分野の色が強い学科だといえる。AI、IoT(Internet of Things/モノのインターネット)に加え、自動運転車、スマートグリッド再生可能エネルギーなども学びのキーワードは実に多彩で、SDGsのテーマとも相性がいい。数理×情報×ネットワークを駆使して、新たなネットワークシステムをデザインするための知識と技術力を磨くことができる。

【特徴的なプログラム】
総合数理学部 数理データサイエンス人工知能応用基礎レベルプログラム

2021年度から文部科学省が「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」をスタートした。明治大学総合数理学部では、この認定制度で想定されている教育はすでに多面的に実施されており、これを改めて整備したのが「総合数理学部 数理データサイエンス人工知能応用基礎レベルプログラム」になる。

総合数理学部 数理データサイエンス人工知能応用基礎レベルプログラム

同プログラムは、「ベーシックプログラム」と「発展プログラム」から構成されていて、総合数理学部3学科で独自の科目が設置されている。ベーシックプログラムは、各学科における専門分野の研究や卒業後の就業に際して、数理・データサイエンス・AIを活用して課題解決ができるようになる実践的な力を養成するのが目的。一方、発展プログラムでは、学生が所属する各学科での専門的な学問内容と数理・データサイエンス・AI分野の内容との関係について深く学び、産業界での実課題の解決に直結するような知識の修得をめざしている。

「本プログラムは、ベーシックプログラムを最短で2年次までに修得・修了できるのが特長です。『数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度』の応用基礎レベルの課程を2年次までに深く学んだ上で修了できるカリキュラムを持つ大学は多くありません。総合数理学部では、数理・データサイエンス・AI教育を1年次から本格的に行っているので、このプログラムを設計できています。各学科の授業の事例としては、私が担当する現象数理学科の『実験データ解析演習』がわかりやすいと思います。これは、他の講義のない土曜日の2限分(200分)や3限分(300分)というまとまった時間を使って、グループ演習を行います。グループごとに分かれた小教室などでホワイトボードなどを活用して目標を整理し、仲間と議論しながら、データ解析を進めます。作業中は教員や大学院制のTA(ティーチングアシスタント)が巡回し、アドバイスをします。つまり、1年次にデータサイエンスの基礎力を身につけ、2年次から研究室レベルの本格的なグループ研究に取り組める環境が用意されているのです。もちろん他学科でも、形態はさまざまですが、同様のデータ分析演習科目が用意されています」

教室でホワイトボードを使いながらディスカッションも可能
教室でホワイトボードを使いながらディスカッションも可能

補足すると「実験データ解析演習」は、現象数理学科のベーシックプログラム「③データエンジニアリング基礎ならびに実践演習」科目群の1科目になる。2年次から履修可能で、秋学期の土曜日にクオーター(四半期)科目として開講されている。土曜1~2限を通しで使う長時間の講義で、前半の期間にデータ解析の基礎を学び、後半はグループごとにテーマを決めて、データ解析に挑戦する。データ分析の課題設定→データ収集→コンピュータを使った解析・結果の取りまとめ→最終回に成果をグループ発表という一連の流れを経験できる。

明治大学では、全学的に「数理データサイエンス人工知能リテラシープログラム」も展開されている。こちらは、すべての学生が履修可能で、文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」の「リテラシーレベル」に認定されている。詳しくは、以下のサイトで確認を。

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明治大学 数理データサイエンス人工知能リテラシーレベルプログラム

総合数理学部 数理データサイエンス人工知能応用基礎レベルプログラム

【入試制度】
学部別入学試験は数学・外国語の2教科

学部別入学試験は数学・外国語の2教科

明治大学の他学部同様、総合数理学部も一般選抜で受験するのが一般的だろう。募集人数が最も多い「学部別入学試験」は、数学と外国語の2教科で実施される。配点は数学200点、外国語120点。数学の範囲は数学Ⅰ・数学Ⅱ・数学Ⅲ・数学A・数学B「数列・ベクトル」となる。学部の特色を反映し、数学が得意な人に有利な受験となっている。

「全学部統一入学試験」の「3科目方式」「4科目方式」でも受験可能。こちらも数学の選択は必須となる。その他、「大学入学共通テスト利用入学試験」、総合型選抜にあたる「自己推薦特別入学試験」もある。詳しくは、明治大学の入試総合サイトで確認を。

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明治大学 入試総合サイト

【想定される進路】
卒業生は幅広い業界・職種で活躍中!

卒業生は幅広い業界・職種で活躍中!

明治大学総合数理学部の卒業生は、情報通信系をメインに、製造系、教育系、インフラ系など実に幅広い業界・職種で活躍している。誰もが知る一流企業に就職した先輩の実績も多く、この分野の産業界からのニーズの高さがうかがえる。

就職先は、3学科それぞれの特色があり、現象数理学科は教育系の就職実績が目立ち、ネットワークデザイン学科は、情報通信系の就職実績の比率が他学科より高くなっている。また、先端メディアサイエンス学科の卒業生の47.7%は、大学院進学を選択しており、これは3学科で最も高い比率となる(2022年度就職実績より)。

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明治大学総合数理学部 卒業後の進路

実践的な数理・データサイエンス・AI教育を展開する明治大学総合数理学部。自由な研究環境からイグ・ノーベル賞受賞の宮下芳明教授のような異才も生まれている。ただ、基本となるのは、分析の基盤となる「数理科学」だ。これはデータ分析などを通じて、実社会の課題解決を行う際に誤った判断をしないために不可欠な知識となるという。最後に中村教授から受験生へのメッセージをいただいた。

「ChatGPTなどの生成AIが登場し、毎年、技術トレンドが変わるのがAI・データサイエンスの世界です。今後さらに便利なAIツールが登場するでしょう。その際、基盤となる考え方・理論をしっかり身につけていれば、その技術を適用できる範囲・限界を自然に理解できます。その核なるのが『数理科学』なのです。総合数理学部では、これまで以上に技術の発展にも目を配りつつ、理論と実践の両面をバランスよく理解した人材を育成して、社会に貢献していきたいと思っています」

Text by 丸茂健一(minimal)

UNIVERSITY INFO

明治大学総合数理学部
MEIJI UNIVERSITY
School of Interdisciplinary Mathematical Sciences
「数理科学」と「情報技術」で実社会の課題に挑む
明治大学総合数理学部
「数理科学」と「情報技術」で実社会の課題に挑む

独自の数理・データサイエンス・AI教育プログラムを展開

「社会に貢献する数理科学の創造・展開・発信」を理念に掲げ、数理と情報についての先端的知識と技術をもって現代社会の諸問題に対処し、国際的に活躍できる人材を育成する。学部独自の「数理データサイエンス人工知能応用基礎レベルプログラム」を設置し、数理・データサイエンス・AIの知識を実践的に活用できる人材育成を行なっている。

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私立大学

学部・学科

【データサイエンスを学べる学部】
■総合数理学部/現象数理学科、先端メディアサイエンス学科、ネットワークデザイン学科
■理工学部/電気電子生命学科、機械工学科、機械情報工学科、建築学科、応用化学科、情報科学科、数学科、物理学科
【その他の学部】
■法学部 ■商学部 ■政治経済学部 ■文学部 ■農学部
■経営学部 ■情報コミュニケーション学部 ■国際日本学部

所在地・アクセス

中野キャンパス(総合数理学部)
〒164-8525 東京都中野区中野4-21-1
JR中央線・総武線「中野駅」下車
東京メトロ東西線「中野駅」下車
ともに駅より徒歩8分

問い合わせ先

中野キャンパス(総合数理学部)
TEL: 03-5343-8000
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