

【南山大学】問題の発見から解決まで取り組む数理技術と応用力を身につける
南山大学理工学部データサイエンス学科

南山大学理工学部データサイエンス学科は、2021年4月に誕生。数学と情報科学のベースの上に数理技術からなるデータサイエンスを身につけることで、多様な組織体において問題の発見から解決までの過程をクリアできる人材を育成している。同学科の三浦英俊教授に学科の特色や学びの体系について聞いた。
ビッグデータ解析や人工知能技術を
社会に役立てる数理技術適用力を身につける
「データサイエンス学科ではまず、微積分学や線形代数学といった数学の基礎を身につけ、そのうえで、ビッグデータ解析の基礎となるベイズ統計や統計学的手法、オペレーションズ・リサーチやプログラミングの技法を学んでいきます」
そう語るのは、南山大学理工学部データサイエンス学科の三浦英俊教授だ。1・2年次で数理技術のベースを身につけたあと、3年次からは、機械学習などの人工知能技術について理論と実習を通じて修得し、経営・環境・交通といった実データの事例を通じて実践的なビッグデータ解析や人工知能技術の応用について理解を深める。多様な専門分野を持つ教員が連携し、企業との共同研究も積極的に行いながら、たしかな基礎力に下支えされた柔軟で高度な応用力を養っていく。

南山大学理工学部データサイエンス学科 3つの特色
1 ビッグデータを解析し、数理モデルを構築する
データサイエンス学科では、数学科目で培う理学的なベースのスキルの上に、人工知能技術や統計学およびビッグデータ解析技術、オペレーションズ・リサーチに関する専門知識を学び、課題解決に必要な数理モデル化とデータ分析技術適用能力を養う。
2 IT技術を学ぶ
理工学部では1年次の共通科目としてプログラミングの授業があり、IT技術を学んでいく。ビッグデータを扱うためにはそういった知識は不可欠であり、2年次には学科科目でPythonによりデータベースを扱いながら実際のデータを解析する方法も学んでいく。また、統計やオペレーションズ・リサーチに関するソフトウェアも修得する授業を設けている。
3 副専攻制によって、深い専門知識と複数の専門性を涵養
データサイエンス学科は自らの主専攻分野に加え、理工学部の他の3分野(ソフトウェア工学、電子情報工学、機械システム工学)から副専攻をひとつ選ぶことで、情報技術の先にある技術統合能力と独自の技術創造能力を習得する体制を整えている。深い専門知識と複数の専門性を併せ持つ技術者の育成を目指す。また、理工学部の他の3つの学科も副専攻にデータサイエンスを選ぶことでデータサイエンスについて学ぶことが可能である。

【特徴的な授業やプログラム】
さまざまな企業と連携した共同研究も実施
データサイエンス学科のカリキュラムは、機械学習やシミュレーションを含む人工知能技術、統計学やビッグデータ解析技術、オペレーションズ・リサーチに関する概論の授業で構成されている。実社会に応用するための数理モデル化やデータ分析まで学ぶことで、問題の発見から解決まで取り組むための数理技術適用力を育てる内容だ。
1年次の「理工学概論(データサイエンス)」では、理工学部データサイエンス学科の各科目のつながりを学ぶ。データサイエンス学科で学ぶ(1)数学、(2)機械学習、(3)オペレーションズ・リサーチ、(4)統計学およびビッグデータ解析をそれぞれ概観し、どのように関連しているのかを学ぶことで、データサイエンスの意義を理解していく。2年次の「OR概論」では企業などの組織における意思決定にも利用されることが多いオペレーションズ・リサーチの基礎を学ぶ。
その他、「確率モデルとシミュレーション」、「統計データ解析法」などの授業で数理モデルや統計学について学習。研究室配属後の卒業研究では、さまざまな企業と連携してデータサイエンスに関する実問題に立ち向かう共同研究も行っている。中部国際空港と産学共同で取り組んだ「手荷物カートの最適運用」に関する現地調査など、教員だけでなく学生も積極的に参画しながら授業で学んだ数理技術を応用することができる。
【注目すべきプロジェクトや施設】
研究室ごとに多彩なテーマの研究に取り組む
研究室の研究事例として、河野浩之教授の研究室では「ビッグデータの製品・社会活動への活用技術」について研究している。河野教授の専門分野は、ビッグデータの中から統計学に基づいて有用な知見を見いだす「データマイニング」技術。例えば、高速道路において円滑な交通を実現するために、超音波センサーやETC、カメラによって収集・蓄積されるデータをもとに交通情報を提供するのもデータマイニングの一種。事故や故障、落下物などの突発事象が起きたときに、過去のデータをもとに渋滞を解消するまでの障害継続時間を予測するなど、アルゴリズム(手順)に基づいて「パターン」や「知識」を獲得するのがデータマイニングの有用な活用事例だ。
また、南山大学理工学部では、米国の大学における約2〜3週間の海外研修(短期留学プログラム)を実施している。英語力を向上させるとともに、海外で勉強することや海外で働くことへの理解を深め、国際性豊かな技術者を育てることを目的としている。
【想定される進路/取得できる資格】
データ分析や現況の問題把握、解決策の提案などに期待
南山大学理工学部データサイエンス学科の卒業生は、サービス、流通、販売、IT、製造分野の企業や官公庁など幅広い分野で活躍している。サービス、流通、販売分野の企業、または官公庁や教育機関では、データ分析や現況の問題把握、それに基づく予測や解決策の提案などを行う役割を担うことが期待される。また、IT企業において、数理技術を実装するソフトウェアの仕様定義や、製造分野の企業における知的機械システムや情報通信機器の企画職なども想定される。
Text by 原航平