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【筑波大学】全学必修の「MDA教育プログラム」とは? 【筑波大学】全学必修の「MDA教育プログラム」とは?

【筑波大学】全学必修の「MDA教育プログラム」とは?

筑波大学

全国に先駆けてデータサイエンス教育の推進に取り組み、2019年度から授業科目「データサイエンス」を全学1年生の必修科目としている筑波大学。学士課程から博士後期課程に至る「数理・データサイエンス・AI(Mathematics-Data Science-AI 、以下「MDA」)教育プログラム」体制を構築し、情報・データサイエンス系の知識やスキルを幅広い分野で活用できる人材の育成を目指している。誰でも視聴可能なビデオ講義、活用事例を公開した「データサイエンス・ケースバンク」など、筑波大学のMDA教育の幅広い取り組みに迫る。

筑波大学の情報教育の歩み

筑波大学は、9学群(学部)と総合学域群、大学院3学術院6研究群+6専攻+グローバル教育院 で構成される総合大学。1973年の開学から今日に至るまで、基礎的な情報リテラシーとコンピュータの利用技術の習得を目的とした共通科目「情報」2単位をすべての学生の必修科目として実施してきた。さらに、2019年度以降、データに基づいた客観的な判断や意思決定が必要であるという社会からの要請に応じ、既存の共通科目「情報」2単位を「情報リテラシー(講義)」1単位及び「情報リテラシー(演習)」1単位に変更するとともに、新たに「データサイエンス」2単位を開設し、計4単位を学士課程の全学生の必修科目としている。

人文・生命・理工・情報・医学・体育・芸術など広範な分野にわたる教育を擁する大規模総合大学において、すべての学生が必修科目として発展的な情報・データサイエンス教育を履修する取り組みは当時、国内初。世界的にも先駆的な取り組みだった。

学士課程から博士後期課程に至るMDA教育プログラム体制

近年の情報技術の急速な発展に伴い、データを適切に収集・管理し、その分析結果を有効に役立てることがあらゆる分野において必須な時代となっている今日。アカデミアにおいても、膨大なデータを収集・分析することにより、研究を推進させる第4のパラダイムとしてのデータサイエンスの重要性が広く認識されるようになってきている。それは産業分野においても同様であり、データ活用による新たな価値創出が、産業競争力の強化にも大きく貢献するようになってきた。急速に発展するAI(人工知能)技術は、一部の分野では人間の認識・判断能力を凌駕するレベルに到達しつつある。このような急速な社会情勢の変化は、大学が輩出すべき人材像にも変革を促している。

筑波大学の情報教育は、情報の専門人材はもとより、他分野においても数理・データサイエンス・AIを活用して課題解決を行うことができる分野融合型研究の実践や人材輩出に貢献する取り組みを行ってきた。そのような実績を踏まえつつ、学士課程から博士後期課程にいたる全学的なMDA教育の体制を構築するため、2021年度に教育担当副学長をリーダーとする「分野融合型数理・データサイエンス・AI 教育推進本部」を設け、筑波大学における全学的なMDA教育を推進している。

学士課程から博士後期課程に至るMDA教育プログラム体制

筑波大学では、リテラシー、応用基礎、エキスパートと着実に知識やスキルを身につけていけるように、3つの「MDA教育プログラム」が展開されている。全学必修の「データサイエンス・リテラシープログラム」、主に情報学群、理工学群の学生が履修する「データサイエンス応用基礎プログラム」、主にシステム情報工学研究群の学生が履修する「データサイエンス・エキスパート・プログラム」だ。詳細は以下の通り。

3つのレベルの「MDA教育プログラム」を実施

1 データサイエンス・リテラシープログラム(詳しくは後述)

1年生を対象としたプログラムで、「情報リテラシー(講義)」1単位及び「データサイエンス」2単位をデータサイエンス・リテラシープログラムの科目に指定している。本教育プログラムでは、実践力重視のカリキュラム、教育効果測定結果を反映した教材設計、さまざまな学問分野でのデータ活用事例など、MDAを学ぶ動機を高めつつ専門性と学際性を担保している。また、大学のウェブサイト上で教育プログラムの情報を公開するとともに、「データサイエンス」の教材として、現在講義動画25本を筑波大学オープンコースウェア(OCW)の「データサイエンス講義」で公開している。
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データサイエンス・リテラシープログラム

2 データサイエンス応用基礎プログラム

主に情報学群、理工学群の2〜4年生を対象に実施されるプログラム(他学群の学生も履修可能)で、リテラシーレベルの学生を理工学分野・情報学分野のエキスパート、さらにはトップ人材へと羽ばたかせる重要な導管(conduit)の役割を果たすものとして構築されている。成果発表を伴うグループワーク、実課題や実データを扱う演習、実務専門家による特別講義や発表の講評を行っており、それらはデータサイエンス・ケースバンク及びデータバンク(後述)として広く公開されている。情報・データサイエンスを専門的に学びたい高校生は、情報学群、理工学群への進学を検討するといいだろう。
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情報学群

理工学群

3 データサイエンス・エキスパート・プログラム(DSEPおよびDSEP+)

システム情報工学研究群の学生を主な対象として、実施されるプログラム(全学の学生が履修可能)。博士後期課程における専門知識に加え、学際的研究や実践力をもつ人材育成のために、「データサイエンス・エキスパート・プログラム(DSEP)」と「データサイエンス・エキスパート・プログラム・プラス(DSEP+)」を設けている。国内外のさまざまな組織とデータを共有しながら議論及び共同研究などを行うことで、データで人類社会の変革をリードできる博士人材を育成している。
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データサイエンス・エキスパート・プログラム(DSEP / DSEP+)

3つのレベルの「MDA教育プログラム」を実施

「データサイエンス・リテラシー(DSL)プログラム」の3つの特色

3つの特色

筑波大学に入学した全学生が取り組むことになる「データサイエンス・リテラシープログラム」。基礎的な情報リテラシーとコンピュータの利用技術の習得を目的とした「情報リテラシー」、データに基づく客観的な意思決定の考え方の習得を目的とした「データサイエンス」の2科目を全学1年次の必修科目として定めている。主な特色は以下の3つ。

1 2019年度入学生以降の卒業時DSLプログラム履修率100%

1年生必修を念頭に、理学・工学分野だけでなく、文系や体育分野、芸術分野などの非理工系分野まで、すべての学士課程に対応すると同時に、社会のニーズにも合致する教材を作成し、全学で利用している。すべての学生がDSLプログラムを履修し、今後の専門分野の学びに応用していく。

2 実践力を重視したカリキュラム

DSLプログラムでは、講義と演習を組み合わせることにより、学生がより実践的に学べる授業を展開。統計分析にとどまらず、データの収集、管理、分析といったデータサイエンスにおける一連のライフサイクルに関わる内容を学ぶとともに、現実世界のデータを利用した演習を行うなど、実践力を重視したカリキュラムとなっている。

3 多様な学生の興味と動機を高める様々な分野の導入ビデオ講義

データサイエンスに初めて触れる1年生を対象として、ビッグデータやAI(人工知能)などの一般的な内容から臨床医学やスポーツ分野まで、さまざまな学問分野におけるデータ活用事例を専門分野の教員が紹介するビデオ講義を取り入れている。また、ビデオ講義は、誰でも視聴可能な教材としてインターネット上で公開されており、今後もさらなる充実化を目指している。
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筑波大学 オープンコースウェア データサイエンス講義

【注目のプロジェクト】
データサイエンス・ケースバンク

データサイエンス・ケースバンク

筑波大学では、実践で役立つデータサイエンス活用事例と分析プロセスの追体験に資するデータを蓄積することを目的とした教育ツール「データサイエンス・ケースバンク」に取り組んでいる。社会課題に対して、一つの解決策を提供するのではなく、解決策の提案に至った道筋を示すことを目標とし、筑波大学の学生と研究者が様々なデータと手法を用いて探索した課題解決のプロセスを公開。事例のなかには、成功したものもあれば、解決に至らなかったものもある。試行錯誤のプロセスを含めて、未知の課題に挑戦する成果を共有することで、社会に貢献している。

データ活用事例のなかには、企業、政府、自治体などと連携した事例もあり、データサイエンスの実践的な活用プロセスを辿ることができる。「ロボットの感情表現」から「地域社会のまちづくり」までさまざまなケースが公開されているので、自分の興味関心のある事例をチェックしてみるといいだろう。
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データサイエンス・ケースバンク

また、学際的な教育・研究を通じて生成したデータを蓄積するとともに広く社会へ公開している。データバンク・プロジェクトで作成された、二次利用可能なデータも多数掲載されている。

【受験生へのメッセージ】
「MDA教育プログラム」で学びをアップデート

「MDA教育プログラム」で学びをアップデート

AI・データサイエンスの知識・スキルがすべての学問分野で必須となっている今日、全学で取り組む「MDA教育プログラム」は、研究成果の向上や情報分野に精通した人材育成に大きく貢献するだろう。また、AI・データサイエンスの知識やスキルを身につけることで、想定される学生の進路も自ずと広がっていくはず。最後に、筑波大学教育担当副学長から受験生へのメッセージをいただいた。

「筑波大学は、IMAGINE THE FUTURE.のスローガンのもと、すべての学生の個性と能力を開花させ、グローバル社会で国際的に活躍できる創造的知性と豊かな人間性を備えた人材を育成することを目標としており、2023年に創基151年・開学50周年を迎えました。
本学はあらゆる壁を乗り越え新しいことに挑戦し続ける精神を尊重します。皆さんは、総合大学としても他に類を見ない幅広い学問分野を有している本学において、多彩な講義・演習や様々な活動に取り組むことで、データサイエンスをはじめ、専門分野に留まらない幅広い教養を習得することができます。本学は学問文化の薫り高い国際都市、つくばサイエンスシティの中核です。皆さんと緑あふれる筑波キャンパスでお会いすることを心から楽しみにしています。」

Text by 仲里陽平(minimal)

UNIVERSITY INFO

筑波大学
University of Tsukuba
全学必修の「MDA教育プログラム」を実施
筑波大学
全学必修の「MDA教育プログラム」を実施

学士課程から博士後期課程に至る全学的な数理・データサイエンス・AI 教育

9学群(学部)と総合学域群、大学院3学術院6研究群+6専攻+グローバル教育院 で構成される総合大学。学士課程から博士後期課程に至る「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」体制を構築し、情報・データサイエンス系の知識やスキルを幅広い分野で活用できる人材の育成を目指している。誰でも視聴可能なビデオ講義や活用事例を公開した「データサイエンス・ケースバンク」など、ユニークな取り組みも行っている。

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所在地・アクセス

筑波キャンパス
〒305-8577 茨城県つくば市天王台1-1-1
つくば駅に隣接するバスターミナル「つくばセンター」6番乗り場より「筑波大学循環(右回り/左回り)」に乗り換え15-20分

問い合わせ先

入試について
Mail:gm.nyusika@un.tsukuba.ac.jp
MDA教育全般について
Mail:mdainfo@un.tsukuba.ac.jp
データサイエンス・リテラシープログラムについて
Mail:joho-gakumu@ml.cc.tsukuba.ac.jp
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