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【東京大学】工学から経済学まで、データサイエンスの学びは幅広く応用できる! 【東京大学】工学から経済学まで、データサイエンスの学びは幅広く応用できる!

【東京大学】工学から経済学まで、データサイエンスの学びは幅広く応用できる!

大倉 直也 さん
大倉 直也 さん
OKURA Naoya
東京大学大学院
情報理工学系研究科知能機械情報学専攻 2年
葛岡・鳴海研究室

データサイエンス系大学・学部に通う先輩は、どのような学び&研究に取り組んでいるの? 今回話を聞いたのは、東京大学大学院情報理工学系研究科でVR(バーチャルリアリティ)について研究する大倉直也さん。大学で行っている研究内容や将来の目標について聞いた。

テーマパークのアトラクションの仕組みに興味があった

——東京大学には3年生のときに学部学科を選択する「進学選択」制度がありますが、その際に工学部機械情報工学科を選んだ理由を教えてください!

幼少期からディズニーが好きで、テーマパークのアトラクションに興味がありました。最初はアトラクションに乗ったりするのが楽しいというだけだったのですが、次第にアトラクションの仕組みにも興味が広がってきて、どのような構造で成り立っているのかを学びたいと思い、工学部を選択しました。

また、映像の没入感と乗り物の動きを利用したアトラクションである「スター・ツアーズ」など、デジタル技術と工学的なモノづくりの融合で魔法のような新しい体験を生み出す仕組みにも興味がありました。そのため、情報系の学びも欠かせませんでした。

——最近のアトラクションは本当にすごいですよね。

大倉 直也 さん

そうですね。一方で、経済学など文系の領域にも興味がありました。東京大学に進学したいと思ったのも「進学選択」制度があったからです。進路を決めるための時間を確保できることが魅力的でした。東京大学の1、2年生は全員が教養学部前期課程に所属し、文系・理系を問わず、幅広い学問領域を学ぶのですが、そこであらゆる可能性を模索しようと思っていました。そして、ギリギリまで迷った結果、工学部を選択しました。

自主制作プロジェクトで制作した「君もギターを弾けるカポ?」

——工学部に入ってから面白かった授業は何ですか?

「自主制作プロジェクト」という実習系の授業が面白かったです。個人でモノづくりをする授業なのですが、VRを使った作品でもいいし、ロボットをつくってもいいし、本当に何でもいいから作品を制作するという内容でした。最後に発表会があって、先生や学生を合わせて40人ぐらいの投票でグランプリが決まります。

——大倉さんは何をつくったのですか?

「君もギターを弾けるカポ?」という作品を制作しました。「カポ」とは「カポタスト」の略で、演奏者の代わりに弦を押さえてくれる補助器具のことです。

弾きたい楽曲のコード譜をコンピュータにあらかじめ読み込ませておいて、ギターのネック部分に取り付けたスイッチを押すたびに、次のコードに切り替わるようになっています。弦の部分にはセンサーを取り付けてあるので、右手で触れると音が出ます。音はGarageBandというアプリで制作して、ギターと接続してあるパソコンから出力されるようになっています。

ギターと接続してあるパソコンから出力

——左手でスイッチを押してタイミングよくコードを切り替えて、あとは右手でセンサー付きの弦に触れるだけ。便利ですね。アイデアはどのように思いついたのですか?

友達と遊んでいるときに思いつきました。私はギターを弾けないのですが、弾くことができる友達にコードだけ押さえてもらって、弦の部分を私が弾くということをやってみたら面白かったんですよね。それでつくってみよう!と。

それでつくってみよう!と
大倉さんが実際に弾いている様子

——発表会の結果はどうでしたか?

「アイデア賞」をもらいました。基本的なプログラミングだけで、それほど難しい技術を使っていないことがよかったのかもしれません。

VRを用いて、人間の認知について研究する

——現在所属している研究室や大倉さんが取り組んでいる研究について教えてください!

私が所属する葛岡・鳴海研究室は、人間がどのように世界とインタラクション(相互作用)しているのかを明らかにするため、VRを端緒として、視覚、聴覚だけでなく、五感をフルに活用したインターフェース技術について研究を行っています。具体的には、デジタル技術によって新たな体験や表現を生み出すデジタルミュージアムプロジェクトやデジタルパブリックアートプロジェクト、シニア層の経験や技能を継承したり、社会参加を活性化させたりする高齢者クラウドなどの研究が行われています。

私が行っていた研究としては、VRゴーグルとヘッドフォンを装着して視覚と聴覚に、足の裏に振動子という振動する機械を取り付けることで触覚に訴えかけることで、まるで空を飛んでいるかのような感覚を生み出す研究でした。VR自体を開発するハードウェア的なものではなく、VRを用いた人間の認知に関する研究ですね。

——アイアンマンみたいなゴゴゴゴゴッッッ!という感じですか?(笑)

そうですね(笑)

——面白いですね。VRにはどうして興味をもったのですか?

VRに興味をもった理由

VR界隈にいる私たちの世代には割と多いのですが、スティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』(2018)ですね。VR世界のなかで繰り広げられる物語なのですが、こんな世界もあるのかと衝撃を受け、面白そうだなと思ったのがきっかけです。また、しっかりと観たことはないのですが、『ソードアート・オンライン』(2009〜)というライトノベルが原作のアニメも有名ですね。VRゴーグルをつけてゲームの世界に入り込むのですが、そこから出られなくなるところから始まる物語です。

興味をもってからは、VRイベントに申し込んで行ってみたり、企業向けの展示会でVR体験をしたりしました。企業向けの展示会ですが、学生が行っても意外と対応してくれるので積極的に参加してみるといいと思います。

——その興味関心に従って、研究室も選択されたのですか?

そうですね。頻繁に取材などを受けている鳴海先生がいたり、今は在籍していないのですが、日本におけるVRの第一人者としても語られたりする名誉教授の廣瀬先生がいたりする結構人気のある研究室なのですが、第一志望で配属が決まりました。

プログラミングの経験は、さまざまな分野で活かすことができる

——来年からマーケティングを行う企業に就職するということですが、VRを用いた研究を行ってきた知識やスキルを活かしていくことはできそうですか?

研究の経験を活かせるような感じではないかもしれません

SQLPythonなどのプログラミング言語を用いたデータ分析がメインの業務になるため、すぐに研究の経験を活かせるような感じではないかもしれません。しかし、研究の基礎ともいえるプログラミングやデータサイエンスなどの学びはビジネス分野でも活かしていくことができるはずです。Pythonは学んでいたことがあるため、今はSQLの勉強をしていますが、ひとつのプログラミング言語をある程度学んでいれば、そのほかの言語にも抵抗感なく取り組むことができると思います。実際、私もスムーズにSQLの知識を身につけることができています。

今後は、メタバースやVR空間におけるショッピングなどの事例も増えてくると思います。そして、商品を手に取ったときの感覚を付与したり、手に持っている時間や商品を見ている時間などのデータを分析したりすることによって、購買意欲を可視化することもできると考えています。そのときに、VRを用いた研究を行っていた経験を活かせるといいですね。

——最後に情報系・データサイエンス系に興味がある受験生にメッセージを!

興味があれば、まずは挑戦してほしいです。ゴールを設定して、その実現のためにプログラミングを勉強したり、数学の知識を身につけたりしていくのがいいと思います。VRでも、ゲームでも、アニメでも何でも大丈夫です。これからはプログラミングやデータサイエンスの知識やスキルはあらゆる分野で応用できると思うので、取り組んでおいて損はないはずです!

取材協力

Life is Tech ! (ライフイズテック)

中学生・高校生〜社会人向けのIT・プログラミング教育サービス。2010年にスタートし、これまで100万人以上にデジタルを活用したイノベーション教育を届けている。
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Life is Tech ! (ライフイズテック)

Text by 仲里陽平(minimal)/Photo by 市川茜(minimal)

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