

マーケティングエンジニア|データ分析によって効果的な広告戦略を導き出す仕事

IT企画推進本部 二課 課長
エンジニア
SNSやYouTubeで何気なく目にする広告の裏側には、精緻なデータ分析と戦略設計がある。最近は、こうしたデジタルマーケティングに関わるエンジニア職も生まれている。いわば「マーケティングエンジニア」と呼んでもいい職業だろう。デジタルマーケティングを中心に事業を展開する株式会社ナハトのIT企画推進本部で活躍する市川伊織さんもそのひとり。日々の仕事内容と広告業界でエンジニアとして働く面白さを聞いた。
マーケティングエンジニアってどんな仕事?
“多くの人”だけでなく“ニーズがある人”に届く広告を提案
スマホでSNSをスクロールしていると、自分の好みにぴったりな商品の広告がピンポイントで表示される。よく観ているインフルエンサーが紹介する商品を、自分もつい買いたくなってしまう。こうした経験に覚えがある人も多いのではないだろうか。現代ではすっかり“あるある”になってしまったが、SNSや動画配信サービスが普及するまでは存在しなかった新しい現象。これらが急速に広がった背景には、従来の広告の常識を覆した「デジタルマーケティング」の革新的な仕組みがある。
「従来のマーケティングの手法では、マスメディアなどを活用して“いかに多くの人々にリーチするか”に主眼が置かれていました。しかし、デジタルマーケティングでは、ユーザーの行動データを解析し、最も反応が期待できる人に最適なタイミングで広告を届けられます。また、マスメディアと比較すると、PDCAサイクル(※)を回しやすい点もデジタルマーケティングの大きな強みです。例えば、テレビCMの場合は高額な製作費やスポンサー費、テレビ局との契約などが必要となるため、お試しで放送して効果がなければ変更するといったことが難しい。一方のデジタルマーケティングは、時代のトレンドやインプレッションに応じて高速でサイクルを回すことができます」
※Plan(計画)→Do(実行)→Check(測定・評価)→Action(対策・改善)のサイクルを循環させること。
そう語るのは、デジタルマーケティング事業を展開する株式会社ナハトでエンジニアとして活躍する市川伊織さんだ。株式会社ナハトは、広告・SNS・インフルエンサー領域を多角的に活用し、利益につなげるマーケティングをクライアントに提供している。事業の主軸となるのは、SNS広告運用とインフルエンサーマーケティング。エンジニアの市川さんは社内用ツールや業務効率化ツールの開発を担当してきたが、現在は、社内外の意思決定を加速させるため、広告効果やユーザー行動データをリアルタイムで可視化し、次の施策を即座に打てる仕組みづくりに注力している。

「デジタルマーケティングの効果を証明するうえで大切なのは、ユーザーが広告を見てから商品購入ページに至ったという流れを漏れなく計測することです。それをすべて計測することによって、弊社の広告が商品購入につながったと説明することが可能となります。そのため、インフルエンサーに商品のプロモーションを依頼する際も、一人ひとりに異なる広告のURLを付与するようにしています。ただ、こうして収集したデータは数値の羅列であり、IT部門以外には理解が難しいこともあります。そこで、ダッシュボードなどのツールを活用して可視化することも、ナハトのエンジニアにとって重要な役割になっています」
広告から商品購入までの流れを把握し、効果を実証する
不特定多数に届くテレビCMやポスターなどに対し、どの広告からページが遷移して商品の購入につながったのかを明確化できる点がデジタルマーケティングの強みだ。商品購入までのプロセスがシンプルなため、経路を特定する技術があれば過去の事例から仮説を立てやすいというメリットもあるという。こうしたデータに基づき、株式会社ナハトではクライアント(顧客)のニーズや商品に合ったマーケティング戦略を提案している。
「効果的なダイエットサプリがあったとして、Instagramに広告を載せるのか、著名なインフルエンサーに紹介してもらうのか、どちらがより効果的なのかを考えるのもナハトの仕事のひとつです。また、SNSに広告を出すにしても、商品のコンセプトやターゲット層に応じて、『すぐに効果があること』を伝えるのか、『すごく効果があること』をアピールするのかといった戦略を提案することができます。そういう意味では、コンサルタントのような仕事をイメージしていただけるといいかもしれません」

クライアントから「インフルエンサーマーケティングをしたい」という依頼があった際、実際の売上につながらないと判断すればSNSの施策を提案することも。このように、デジタルマーケティングには、業績への貢献をすぐにデータで示し、戦略を変えられる柔軟さがあると市川さんは話す。
「どれだけ戦略を練っても施策が失敗することはあるでしょう。ただ、私たちが日々のデータを管理しているからこそ、うまくいっていないこともすぐに感知することができるのです。そして、柔軟に戦略を切り替えていくことができる。同時に、広告の効果が未知数の場合でも、一度チャレンジしてみてデータを検証しようという動きが可能です。ナハトの事業は成果報酬型が中心。ナハトは成果報酬型モデルを採用し、クライアントの成果がそのまま自社の成果になります。だからこそ、あらゆる施策を数字で検証し、最大限の効果が出る戦略だけを採用しています。そのため、クライアントに寄り添って本当に効果的な手法だけを追求しています」
エンジニアもマーケターであるべき
市川さんがエンジニアとしてやりがいを感じるのは、デジタルマーケティングによってクライアント企業の売上が伸びたことを実感した瞬間だ。単に広告が“バズる”だけでなく、実際の商品購入にまでつながって初めて達成感を得ることができるのだという。単純にプログラミングが好きで仕事に打ち込んでいるエンジニアも数多く存在するなかで、クライアント企業、ひいては自社の成長を目指してデータ分析に取り組んでいる。
「エンジニア、つまりデータサイエンス側の人間もマーケターであるべきだというのが、デジタルマーケティング企業でエンジニアとして働く私の持論です。私たちはデータに基づいて定量的な数値を分析し、マーケターは私たちがつくり出した広告設計を定性的に膨らませていく。この2つの動きはセットだと思っていて、決して切り分けることができません。そして、互いの視点を共有することが、より良いプロモーションの提案につながっていくと考えています」

マーケティングエンジニアに求められる資質とは?
「プログラミングだけでは生きていけない」という直感があった
学生時代は幅広い分野に関心を持っていたという市川さん。さまざまな科目を選択できる点に魅力を感じて早稲田大学の社会科学部に進学し、経営学や統計学、会計学、プログラミングなどの学びを深めた。プログラミングには楽しさを覚えていたが、「プログラミングだけで生きていくのは難しい」とも考えていた。同時に、「他分野との掛け合わせで力を発揮するのがプログラミングだ」という直感があったという。
「もともとマーケティングやメディアには興味があり、大学時代には新聞社やYouTuber事務所でのインターンも経験しました。YouTuber事務所では、予算に応じて多くの人々にリーチさせるための戦略づくりを担当し、『プログラミングが役立ちそうだな』とは感じていました。しかし、当時はSNSマーケティング自体が主流ではない時代。大学卒業後はプログラミングのスキルを磨こうと、エンジニアとしてキャリアをスタートすることに決めました」
広告を通じて幅広いビジネスに関われることが魅力
市川さんは大学在学中から、フリーランスでWEBサイトの構築などを受注していた。やがてエンジニアとして広告系の企業に就職するも、個人事業主と同じような仕事に取り組む日々。広告も開発も好きだったが、会社に属している意味を見出せずにいた。そんなとき、ナハトで働いていた友人の話を聞き興味を抱いた。
「最初に魅力を感じたきっかけは、話を聞いた社員の印象のよさです。また、これから伸びていくことに疑いようのない事業内容であるとも思いました。広告業界でエンジニアとして働く魅力として、開発のリードタイム(作業時間)の短さがあると思います。一般的なエンジニアは、数十年にわたってひとつのプロジェクトに関わることも少なくありません。そして、そのプロジェクトで独自の開発技術を磨いていくことになります。しかし、私たちのような広告業界のエンジニアには、技術力よりもむしろビジネスへの深い理解が求められます。広告はあらゆる業界のハブとして機能しているため、美容業界から製造業、エンタメまで幅広いビジネスに携われるのが面白いところだと思っています」

マーケティングエンジニアの未来像とは?
AIと並走できるエンジニアが生き残っていく
AI(人工知能)技術が急速に進化し、エンジニアをはじめデータサイエンスに関わる仕事がなくなるのではないかという予測もある近年。実際、市川さんも多くの業務をAIの活用によって効率化しているという。しかし、エンジニアという仕事がなくなると市川さんは考えていない。AIが当たり前に活用される時代、ナハトは「AIを使いこなすエンジニア」を育成し、データドリブンな広告戦略をさらに進化させていく。
「AIと並走していくためには、その仕組みを深く理解しておかなくてはなりません。そしてAIの元を辿れば、さまざまなデータを分析して役立てる統計学に行き当たります。そのため、統計学の理論を知っておくことは、次世代のエンジニアとして活躍する上で必須だと考えています。また、AIの登場によって、エンジニアという職業の専門性は徐々に薄れていくとも思っています。これから大切になるのは、他の分野とデータサイエンスを掛け合わせることで価値を生み出すこと。プログラミングを専門的に学ぶだけでなく、ジェネラリストとして横断的に知識を身につけることが、特にマーケティングに関わるエンジニアには求められるはずです」
データ活用で広告業界のトップを目指したい
市川さんがナハトで実現したい目標は、広告業界におけるデータ活用の最前線に立つことだ。デジタルマーケティングの分野で順調に成長するナハトだが、圧倒的なデータ活用技術を持つ企業は他にも数多く存在している。そんな現状のなか、「データ活用で広告業界のトップを目指したい」と市川さんは力強く語る。
「私たちの業界では、データをうまく活用すればするほど、それが結果として売上に反映されます。現在のトップ企業も、データによって早期に人材を育て、早期に売上をつくる仕組みを構築したことで大きな発展を遂げました。今後は社内業務と顧客へのアプローチの両面でデータ活用をさらに推し進め、クライアントとナハトの事業成長に貢献したいと考えています」
※掲載情報は、2025年8月時点のものです。
【取材協力】
株式会社ナハト
インフルエンサーマーケティングやSNS広告を中心とした支援会社と、広告領域以外で運営する事業会社という2つの側面を持った「SNSマーケティングカンパニー」。広告・SNS・インフルエンサー領域において、「すべてのフローで利益を生み出す」マーケティングを提供している。
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株式会社ナハト
Text by 上垣内舜介(minimal)/Photo by 丸茂健一(minimal)