データサイエンス百景

未来の解像度を上げるデータサイエンス系大学進学情報サイト

大学入試のスペシャリストによる2026年度共通テスト「情報Ⅰ」振り返り&2027年度予想。平均点を大きく下げた「難化」の正体とは? 大学入試のスペシャリストによる2026年度共通テスト「情報Ⅰ」振り返り&2027年度予想。平均点を大きく下げた「難化」の正体とは?

大学入試のスペシャリストによる2026年度共通テスト「情報Ⅰ」振り返り&2027年度予想。平均点を大きく下げた「難化」の正体とは?

新沼 正太 所長
新沼 正太 所長
株式会社進路企画
進路支援総合研究所

2026年度の「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)でも、昨年に引き続いて「情報Ⅰ」の試験が実施された。大学入試センターが発表した実施結果によると、第1回の実施となった昨年度よりも平均点が大きく下がっていることがわかる。今回は大学入試のスペシャリストである株式会社進路企画 進路支援総合研究所 新沼正太所長に、2026年度の「情報Ⅰ」の振り返りと、2027年度に向けた予想・対策を聞いた。

難化の予想は的中。処理スピードの違いが結果に差をつけた

私は昨年、2026年度の「情報Ⅰ」について、平均点を共通テストの作問基準となっている60点に下げるための調整が入るだろうと予想しました。

実際に今回の結果を振り返ってみると、その予想がおおむね的中していたといえるでしょう。本年度の「情報Ⅰ」全体の平均点は56.59点と、昨年度の69.26点を大きく下回る結果となっています。

共通テスト(本試験)情報Ⅰ平均点等
令和7年度・令和8年度比較

年度 教科名 科目名 受験者数 平均点 最高点 最低点 標準偏差
令和7年度 情報(100点) 情報Ⅰ 279,718 69.26 100 0 16.09
旧情報 22,171 72.82 100 0 14.43
令和8年度 情報(100点) 情報Ⅰ 305,202 56.59 100 0 15.72

※大学入試センター プレス発表資料(令和7年2月6日付、令和8年2月5日付)をもとに作成
詳細はこちら
令和7年2月6日付

令和8年2月5日付

ここで注目したいのが、現役生と浪人生の平均点の違いです。私が入手したデータによれば、受験生の大多数を占める現役生は理系が59.2点、文系が53点と、全体の平均点から見ても妥当な数字になっています。一方、浪人生の平均点を見ると、理系が67点、文系が62点と、昨年度に引き続き高得点を維持していることがわかります。

令和8年度 共通テスト『情報Ⅰ』現役・既卒別 平均点推計
※ 新沼所長のデータをもとに作成

こうした二極化が起こったのは、今回の問題が数学的な難易度の上昇ではなく、時間的な制約によって難化したからだと考えられます。

今回の「情報Ⅰ」においてひとつのキーになったのは、情報分野に関する用語の理解です。情報分野には独特の表現や言葉が多く、問題自体は理解できるものであっても、専門用語の多い設問を読み解くことに時間がかかります。普段から情報分野に関心を持っていればすらすらと理解することができますが、試験対策の勉強だけをしているとそれが非常に難しい。特に、昨年度は用語の説明が問題に記載されているケースが多かったのですが、本年度はそれが省略されているケースが散見されました。

つまり本年度の「情報Ⅰ」が難化したと思われている要因は、問題の“抽象化”によって処理スピードが求められたためだと推察できます。専門用語を増やすことで、問題自体の難易度を極端に上げることなく平均点を下げたのです。

浪人生の平均点が下がらなかった要因もここにあると考えられます。当然のことですが、浪人生は現役生と比較すると、ひとつの科目の勉強に充てられる時間が多い。もともと数学的な知識を持っていることに加え、情報分野の用語や問題に慣れる時間を確保できたことが、両者の平均点の差につながったのだと考えています。

個別の問題を暗記するのではなく、本質を理解する学び方を

この二極化は、受験生のみならず、教育現場の課題としても挙げられます。というのも、プログラミングなどの背景知識を高校で情報科目を受け持っている教員自身が十分に備えていないケースが多く、それが指導の質に大きく影響しているのです。

実際に、私立高校から今回の「情報Ⅰ」の結果を受けて情報科目の重要性を認識したという声も多く聞いています。問題の“内容”としては得点を稼ぎやすい科目であるにもかかわらず、問題の“本質”を理解している上位層に大きく差をつけられてしまう。こうした現状への危機感から、対策の強化を検討する動きが進んでいます。

では、その対策とは何か。あらゆる科目に共通することですが、受験勉強には個別の単元を頭に入れるのではなく、それぞれの単元を結びつけて捉える目線が求められます。特に「情報Ⅰ」の場合、専門的な数学の知識はそこまで必要なく、基礎的な学びの組み合わせによって答えを導き出すことが可能です。
これは、現代文の問題を解く時の考え方に近いかもしれませんね。問題文に登場する基礎的な用語や読解力をしっかりと身につけておく。そして、一つひとつの問題を暗記するのではなく、その背景にある科目の本質を捉える。この考え方が、「情報Ⅰ」を受験する生徒側にも生徒に教える教員側にも重要だと強く感じています。

また、今回の「情報Ⅰ」は問題の処理スピードを調整したことにより、作問者のねらい通りの結果になったと考えられます。これも共通テスト全体にいえることですが、「マーク式」という制約の中で、受験生が本質を学んでいるかどうかを判断する工夫が問題によく織り込まれています。「情報Ⅰ」は次年度で3度目の実施となりますが、作問者としては本年度で設問のポイントを見つけたという状況でしょう。
よって、2027年度も問題の傾向や難易度は本年度から大きく変化しないと予想しています。試験の中で扱うテーマは変わるかもしれませんが、作問の考え方自体は変わらないだろうということです。

共通テスト全体としてもうひとついえるのは、学んできた知識を実体験とリンクさせて問う傾向が強くなっているということです。このため、「情報Ⅰ」においても具体的なデータやプログラミング分野のトピックをテーマとしながら、受験生の持っている知識と実体験を活用して解かせるような問題が出る可能性も十分にあると思っています。

専門用語の理解と情報分野への関心が来年度のポイントに

新沼所長

2027年度の「情報Ⅰ」への対策として、大きく2つのポイントが挙げられます。

まずは用語の理解の徹底です。本年度で省略された専門用語の説明が、来年度に復活するとは考えにくい。今回、用語の理解が現役生と浪人生で平均点が大きく開いた要因だからこそ、専門用語の意味を頭に入れておいて、処理スピードを下げないようにすることが明暗を分けると思います。
さらに、基本的な英語の語彙力があると助けになってくれるかもしれません。プログラミングは基本的に英語で記述されます。手続き列中の指定された場所に無条件にジャンプする際に用いられる「goto」。そのプログラミング的な意味がわからない場合でも、「go to=目的地に向かう」という英語の意味さえ理解していれば、おおよそのイメージを掴むことはできるでしょう。これはもちろん極端な例ですし、100%通用するとは言い切れませんが、ご参考までにお伝えしておきます。

2つめのポイントは、情報分野やプログラミングに関わる事象について、日頃から視野を広げておくことです。勉強している分野について、普段から興味を持っているのといないのとでは定着度が大きく異なります。基本的な仕組みや最新のトピックを少し知っているだけでも、問題を解く際のアドバンテージになってくれるはずです。
共通テストや大学入試の背景には、社会的な課題に興味を持ち、それを解決したいという思いを持った人材を評価したいという思いがあります。受験だけでなく社会全体に興味を持ち、きちんと根拠を持った新聞やインターネットの記事に触れること。すぐに得点につながるとは限りませんが、こうした習慣が結果につながっていくのではないかと考えています。

プロフィール

株式会社進路企画 進路支援総合研究所
新沼正太 所長

大手予備校で講師管理、校舎長などを歴任し、2020年より現職。共通テスト・一般選抜・推薦入試などの分析、講義を幅広く行う入試のスペシャリスト。

取材協力

株式会社進路企画
進路企画ロゴ

Text by 上垣内舜介(minimal)/Title Photo by ダイ / PIXTA

TOP