【立正大学】スポーツデータサイエンス座談会・後編「スポーツ好きこそデータサイエンス!幅広い学びが専門性を深める」
立正大学データサイエンス学部
専門:トレーニング科学、スポーツパフォーマンス分析、チームビルディング

専門:スポーツ統計科学、統計物理学、社会物理学


専門:コーチング、メンタリング、スポーツマネジメント
理論は現場でどう活きるのか――。そして成果を生むために、データはどのように人へ届けられるべきか。コンペティションへの挑戦、プロ球団との連携、コーチングが現場で果たす役割まで。立正大学データサイエンス学部が描く、スポーツデータサイエンス実践の現在地とは?
この記事は前・後編の「後編」です。「前編」はこちら

【立正大学】スポーツデータサイエンス座談会・前編「理論・現場・人をつなぐデータサイエンス教育」
立正大学データサイエンス学部
数理モデルからチームづくりまで。データが現場を動かす
――立正大学データサイエンス学部における、スポーツデータサイエンスの実践的な事例について教えてください。
成塚先生 私のゼミナールでは、昨年卒業したデータサイエンス学部1期生の中に、日本統計学会が主催する「スポーツデータサイエンスコンペティション」のサッカー部門に出場した学生がいました。
サッカー分析で扱うデータは、大きく「トラッキングデータ」と「イベントデータ」に分かれます。前者は選手の連続的な位置情報、後者はパスやシュートといった具体的なプレーの記録です。その学生は、これらのデータから1対1のドリブル局面を抽出し、ボール保持者(アタッカー)と最も近い守備者(ディフェンダー)の相互作用に着目しました。そして、物理学の運動方程式を基盤とする「アタッカー・ディフェンダーモデル」という理論モデルを用いて、その局面を記述・分析していました。
両者の距離や速度、加速度の関係性を数理的に捉え、プレー評価や行動原理の解明を試みる。学生のレベルとしても、またスポーツデータサイエンス分野においても、きわめて先端的な取り組みになっていました。その学生は現在、他大学の大学院に進学し、研究を継続しています。本学部で培った基礎が、次の研究段階へとつながっていると感じています。

永田先生 私は、プロ野球独立(BC)リーグの埼玉武蔵ヒートベアーズと共同で行った「塁感プロジェクト」を紹介したいと思います。これは、データサイエンスを活用し、盗塁能力を高めることで、チーム全体のパフォーマンス向上を目指したものです。結果として、BCリーグの盗塁記録を大幅に更新し(60試合で164盗塁)、リーグ優勝にもつながりました。
まず、重要なのは、盗塁というプレーの構造を分解して考えることです。分解せずに議論すれば、「足を速くする」「反応を良くする」といった抽象的な話にとどまり、その根拠が曖昧になります。そこで盗塁を、①スタートの反応、②初速の加速局面、③疾走局面、④スライディングという4つのフェーズに分解しました。そして選手ごとに、どの段階に課題があるのかを可視化していきます。
選手には本学のフィールドに来てもらい、1000分の1秒単位でのスプリントタイムや、ランダムに発光する信号に対する「全身反応時間」などを高精度機器で計測しました。その結果、反応を鍛えるべきか、走力を強化すべきか、あるいはリードの距離をどう設定するべきかといった具体的指針が導き出されました。


※データに基づくフィードバックとリフレクションによってビジョンがはっきり見えてくる
学生も中心となってプロジェクトに参加し、データ収集から分析、さらには選手へのフィードバックまで担いました。選手ごとに適切なリード幅を提案したり、科学的根拠に基づくトレーニング方法を助言したりする。ただし、目的はあくまで盗塁数の増加であり、足が速くなること自体が目的ではありません。目的と手段を取り違えないことを学生には意識してもらっていました。
さらに不可欠だったのは、監督や選手との密なコミュニケーションです。いかに精緻なデータがあっても、その価値を理解し、現場が納得しなければ、試合で盗塁のサインは出ませんし、選手も自信を持って盗塁のスタートを切れません。データを扱う技術力に加え、それを共有し、共感を得るコミュニケーション力もまた、実践には欠かせない要素なのだと考えています。
宮﨑先生 永田先生が話してくれた、「目的と手段」の話は、コーチングにおいても本質的だと思います。本学からは、女子ラグビー日本代表選手を15人以上輩出しています。なぜそれができたのか。それは、適切なゴール設定と、それに向けた具体的なプランニングが徹底されていたからだと思っています。「なぜラグビーをしているのか」「なぜ日本代表を目指すのか」。その問いに自分の言葉で答えられること。そして、目標達成のために大学4年間をどう設計するのか。そこを引き出し、整理するのがコーチングの役割です。同時に、指導者自身がコーチングを理解していることも重要です。いわば“コーチへのコーチング”が必要なのです。
例えば、「戦略」と「戦術」という概念があります。試合中の具体的手段が戦術であるならば、中長期的にどのようなチームスタイルで勝つのかを描くのが戦略です。仮にヘッドコーチが「接戦で勝つ」と掲げたとします。それは何点差なのか。「14対10」と具体化すれば、ラグビーでは2トライが必要になります。では、その2トライをどう生み出すのか。シナリオを描き、うまくいかなかった場合の代替案まで言語化していく。
このプロセスを通じて戦略が明確になり、それが日々の戦術練習に反映されます。もし「守り勝つ」という戦略を掲げながら攻撃練習ばかり行っていれば、そこにズレが生じます。目指す絵を言語化し、共有し、同じ方向を向いて取り組む。その積み重ねが、成果へと結実していくのです。

スポーツに閉じない学びが、可能性を広げる
――立正大学データサイエンス学部の魅力はどこにあるとお考えですか。
宮﨑先生 体育学部とは異なり、スポーツだけに閉じない学びができる点が大きな魅力だと思います。立正大学データサイエンス学部では、経済学から物理学まで、幅広い分野に触れることができます。
スポーツ指導者を志して入学する学生も少なくありませんが、指導者という職業は、大学卒業後すぐに安定したキャリアを築けるとは限らない世界です。仮にその道を断念することになったとしても、別の進路を描けるだけの基盤がある。将来の選択肢を広げられることは、大きな価値だと考えています。
永田先生 幅広い専門分野の教員から、「何を学ぶか」だけでなく「どう学ぶか」という方法論を身につけられることも重要です。他分野の学び方をスポーツ分野に応用できる。アプローチの多様性を知ることは、非常に有意義だと思います。
また、成塚先生の理論的分析、私のケーススタディ、そして宮﨑先生のコーチングにおける人と人との関わりまで、理論から実践、さらには人間理解に至るまでを一貫して学べる環境は、立正大学データサイエンス学部の強みだと思っています。

成塚先生 スポーツの理論分析においても、最先端ではきわめて多様なアプローチが展開されています。物理学、統計学、機械学習、ゲーム理論、ネットワーク科学……、そのため、幅広い視点に触れることは、必ずしもスポーツに限らず、思考の幅を広げることにつながります。幅広い学問領域を横断できる環境は、将来的にも大きな財産になるはずです。
スポーツを「する人」も、「読み解く人」も大歓迎
――最後に、受験生へメッセージをお願いします!
永田先生 実際にスポーツ分析に積極的に取り組んでいる学生の中には、これまで競技経験がない学生も少なくありません。サッカーを「する」よりも「見る」ことが好きで、分析的に捉えることに魅力を感じている学生もいます。
運動が得意でなくても、スポーツを科学的に検証したい、データで読み解きたいという思いがあれば、活躍できる場は十分にあります。立正大学データサイエンス学部には、そうした志向を持つ学生が挑戦できる環境が整っています。
成塚先生 先ほどお話しした「スポーツデータサイエンスコンペティション」に出場していた学生もサッカー好きでしたが、自分ではほとんどプレーしないんです。しかし、誰よりも熱量高く取り組める。そういった思いさえあれば後押しできる環境もあるし、教員も全力でサポートしています。
宮﨑先生 スポーツへの関わり方は、プレーすることだけではありません。見ることが好きな人もいれば、選手を支えることにやりがいを感じる人、分析することに魅力を見出す人もいる。
「好き」がどのように仕事につながるかは、わからない時代だと思います。だからこそ、多様な分野を学びながら、自分なりの関わり方を模索できる環境が重要です。立正大学データサイエンス学部には、その可能性を探る土壌があります。学びを重ねる中で、自分の進むべき道が見えてくるのではないでしょうか。

※掲載情報は、2026年1月時点のものです。
Text & Photo by データサイエンス百景編集部
この記事は前・後編の「後編」です。「前編」はこちら

【立正大学】スポーツデータサイエンス座談会・前編「理論・現場・人をつなぐデータサイエンス教育」
立正大学データサイエンス学部
立正大学が、2026年も【来校型オープンキャンパス】と【WEBオープンキャンパス】を開催する。
オープンキャンパス情報は、2026年4月下旬に公開予定の特設サイトにて詳しく紹介。お知らせ情報だけでなく、各種説明動画やスペシャル企画も予定されている。
- 来校型
- 2026年6月14日(日)、7月19日(日)、8月15日(土)、8月16日(日)
- 2027年3月14日(日)
- WEBイベントLIVE配信
- 2026年12月13日(日)





