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【桐蔭横浜大学】横浜F・マリノスのアナリストとして、データ分析で勝利に貢献する

岩本 青 さん
岩本 青 さん
IWAMOTO Ao
桐蔭横浜大学スポーツ科学部
スポーツ健康科学科 4年
横浜F・マリノス アナリスト

膨大な試合映像を読み解き、相手の特徴や弱点を浮かび上がらせる。試合中は、分析をもとに勝敗を左右する判断材料を提示する――。横浜F・マリノスのアナリストとして現場に立つ岩本青さんは、高校時代に選手から転向してこの道へ進んだ。大学で経験を積み、世代別日本代表のテクニカルスタッフも務めるなど、着実に活躍の場を広げてきた。サポーターに勝利を届けることを使命とする、アナリストの仕事について話を聞いた。

アナリストの仕事を通して、サポーターに勝利を届けたい

――横浜F・マリノスのアナリストの仕事を教えてください。

マリノスのアナリストチームは、チーフアナリスト1名、アナリスト2名、パフォーマンスデータアナリスト1名の計4人で活動しています。チーフが自チームの分析を担当し、私を含めたアナリスト2名で対戦相手の分析を行なっています。

対戦相手の試合映像を見ながら、どんな特徴があるのか、どこに弱点があるのかを整理します。その結果を、まずは監督やコーチングスタッフに対して、映像を用いながらミーティングで共有します。そして翌日には選手にも落とし込み、試合に向けた準備へとつなげていきます。

――ミーティングで意識していることはありますか?

「伝え方」は意識するようにしています。自信なさそうに話してしまうと、「大丈夫か?」と思われてしまいます。監督やコーチ、選手に納得してもらうためにも、根拠を持ったうえで、堂々と伝えることを心がけています。

自分たちの分析が、そのままトレーニングに反映されることもありますし、勝利に直結する仕事だと日々感じています。練習中や試合前に選手から直接質問を受けることもあるので、その場でしっかり答えられるようにもしています。

――試合当日はどのように動いているのでしょうか。

試合には必ず帯同し、アナリストチームでスタジアムの高い位置から試合を見ています。

試合映像をリアルタイムでパソコンに取り込み、1人は「Sportscode(スポーツコード)」というソフトウェアを使って映像を切り分けながら、タグ付けを行います。タグ付けとは、簡単にいうと付箋をつけていくような作業で、ここは注目するポイントだなと整理していくんです。

別の1人は、その映像の中から重要な場面を抽出し、ハーフタイムに監督や選手に見せられるように映像を選定していきます。同時に、ベンチにいるコーチともインカムで連携し、試合状況を共有します。これらの情報は、試合中の選手への指示や交代の判断材料として役立てられます。

さらにもう1人は、選手個人にフォーカスして映像を切り出し、プレーごとの分析を進めていきます。

データ分析
※試合当日は、スタジアムの高い位置から分析業務を行う

――事前の分析と実際の試合展開はどの程度一致しますか。また、試合後についても教えてください。

大枠では想定通りに進むことが多いのですが、試合の中で相手が戦術やフォーメーションを変えてくることもあります。特にビハインドの状況では、その変化が大きくなります。

そうした変化をどこまで予測して、ベンチに共有できるかが重要だと感じています。ただ、現状はまだ難しさもあって、そこは今後もっと精度を高めていかなければいけない部分だと思っています。

試合後はチーム内で振り返りを行い、気になった点を共有しますが、私の役割は対戦相手の分析なので、試合終了後すぐに次の試合に向けた分析業務に入ります。

――アナリストのやりがいと難しさについて教えてください。

サッカーに関わる仕事なので、やりがいは大きいです。一方で、自分たちの発信する情報が、監督やコーチの判断、選手のプレーにまで影響する。そこには大きな責任が伴います。

そして、スタジアムやテレビの前で応援してくれているサポーターの存在もあります。勝てるかどうかで、サポーターの1週間の過ごし方も変わってしまう。負けてしまうと、次の試合まで楽しく過ごせないですよね。だからこそ、少しでも勝利に近づけるように、自分たちの仕事で応えていきたいと思っています。

高校時代にゴールキーパーからアナリストに

――もともとサッカーはやっていたのですか?

小学校1年生の頃にサッカーを始めました。兄がやっていた影響です。小学3年生くらいからはゴールキーパーをやっていて、ユニフォームが一人だけ違うのが、なんとなくいいなと思ったのがきっかけでした。深い理由はないですね。

そのまま中学のクラブチーム、高校のサッカー部でもゴールキーパーを続けました。今振り返ると、後ろから全体を見渡せるポジションだったことは、自分に合っていたのかもしれません。

ただ、高校1年生のときに、選手としての限界を感じてしまって。「もういいかな」と思い、一度はサッカー部を辞めようと考えました。それでも監督に「とりあえず残ってみたらどうだ」と声をかけてもらい、マネージャーのような立場でチームに関わることになりました。

せっかく残るなら、何か貢献したい。そう考えて、試合のデータを取ってみることにしたんです。iPadで公式戦を撮影し、映像を見返しながらシュート数やパス数をノートに書き出して、Excelでまとめ、レポートにして監督に提出しました。

すると「いいな。アナリストみたいなことをやってみたらどうだ」と言ってもらえて。そこからAチーム、Bチームそれぞれ10試合ほど、データを取っていました。

高校時代にゴールキーパーからアナリストに転向

――データを集める中で、どんな発見がありましたか?

「この選手は思ったよりボールを失っている」「実は空中戦に強い」といったように、試合を見ているだけでは気づかないことが数字として見えてくる。その意外性が面白かったですね。

当時はアナリストという仕事自体を知らなかったのですが、調べるうちに相手チームの分析も行うと知り、「やってみよう」と。

高校サッカー選手権の新潟県予選では、トーナメント表を見てベスト8で強豪と当たると予想できたので、8月頃からその対戦相手の映像を集めて分析していました。弱点だと感じた点をレポートにまとめて監督に渡すと、それをもとにした練習も取り入れてくれて。結果的にその試合に勝ち、ベスト4に進めたときは、本当にうれしかったです。

――その頃から、将来はアナリストになりたいという思いがあったのですか?

はい。大学卒業後はアナリストとしてやっていきたいと考えていたので、その視点で進学先も探しました。サッカー部でアナリストとして活動できること、スポーツ分野の学びがあること。この2点を軸に検討し、桐蔭横浜大学スポーツ科学部への進学を決めました。

当時、サッカー部には大学3年次のアナリストの方が在籍していて、それが現在、川崎フロンターレでテクニカルスタッフを務める梁允虎(りゃん・ゆの)さんでした。その存在が大きかったですね。「アナリスト」という役割を受け入れているチームだと感じ、ここでやってみたいと思ったんです。

桐蔭横浜大学への入学が決まっていた高校3年生の3月に、梁さんに連絡を取り、ヘッドコーチとも話をさせていただき、約1週間チームに帯同することになりました。その流れで「4月からよろしく」という形になり、大学での活動が始まりました。

U-19日本女子代表やU-20日本代表に
テクニカルスタッフとして帯同

――高校時代は手探りで取り組んでいたと思いますが、大学ではどうでしたか?

大学に入学してからは、梁さんがトップチーム、自分がBチームを担当する形でスタートしました。梁さんに教わりながら、それまで経験のなかった映像編集にも取り組むようになりました。

編集した映像を使ってミーティングで相手チームの特徴を伝えるなど、より実践的な形で分析に関わるようになりました。

桐蔭横浜大学サッカー部でアナリストとして活動
※桐蔭横浜大学サッカー部でアナリストとして活動

大学1年次の終わりには、各地域の大学選抜チームで対戦する「デンソーカップチャレンジサッカー」に、関東選抜チームのアナリストとして帯同しました。そこで、筑波大学サッカー部監督の小井土正亮先生のもとで仕事をさせていただき、多くのことを学ぶ機会になりました。

また、梁さんが横浜F・マリノスでアナリストとしてインターンをしていた縁もあり、大学2年次の6月から私もインターンとして関わるようになりました。最初は、攻撃時のプレーに関する指標データを整理し、レポートにまとめるといった基礎的な業務が中心でした。

そうした中で、大学2年次の1月、小井土先生から連絡をいただき、「U-19日本女子代表にテクニカルスタッフとして帯同してほしい」と言われたんです。2月の国内キャンプ、8月のアジアカップ予選(マレーシア)、10月の国内キャンプと、1年間を通して関わる形でした。

さらに4月には、関東大学選抜とJリーグ選抜(U-22)の試合に帯同した際、U-20日本代表のテクニカルスタッフの方と知り合い、その流れで6月にフランスで開催される「第51回モーリスレベロトーナメント」にも帯同することになったんです。

――世代別の日本代表に関わることになったときは、どんな思いでしたか。

小学生から高校1年生までは選手として、その後はアナリストとしてサッカーに関わってきましたが、日本代表という舞台は正直、想像もしていなかったので、驚きが大きかったです。ただ、せっかくいただいた機会なので、「自分が呼ばれた意味を示さなければいけない」という気持ちで臨んでいました。

U-19日本女子代表のアジアカップ予選では、対戦する3カ国の分析を任せてもらいました。勝敗に直結する仕事なので責任は大きかったですが、一方で「これまでやってきたことをそのまま出せばいい」という感覚もありました。

日本代表という舞台に「自分が呼ばれた意味を示さなければいけない」という気持ちで臨んでいました。

――桐蔭横浜大学サッカー部でアナリスト、横浜F・マリノスでのインターンに加えて、日本代表にも帯同するとなるとかなり多忙だったのでは?

そうですね。2025年シーズンは、非常に多くの試合映像を見ていたと思います。また、マリノスも残留争いに直面する厳しいシーズンで、自分が担える役割はまだ限られていましたが、「勝負の世界で働く」ことの厳しさを強く感じていました。

――学業とも両立されていたと思いますが、大学で印象に残っている学びはありますか?

「機能解剖学」や「スポーツ史」、「スポーツ心理学」など、一見するとアナリストとは直接関係のなさそうな授業が印象に残っています。

例えばスポーツ心理学では、選手のモチベーションをどう引き出すかといったテーマを扱いました。内的動機づけや外的動機づけといった考え方を学ぶ中で、「どうすれば選手が自発的に動けるか」を考えるようになりました。

アナリストはデータや分析結果を提示するだけでなく、それを選手にどう受け取ってもらい、どう行動につなげてもらうかも重要です。そういう意味で、現在にも活かされていると感じています。

マリノスを勝たせられるアナリストに
そして日本サッカーに少しでも貢献できる存在に

――2026年シーズンからは正式に横浜F・マリノスのアナリストに加入されています。

正直、プロとして契約してもらえるとは思っていなかったので、「自分にやっていけるのか」という不安はありました。ただ、それ以上にうれしさが大きかったですし、任せてもらえるのであれば応えたい、やってやろうという気持ちでした。

実際に2026年から正式に所属してみると、インターンの頃とは求められるレベルが何段階も違うと感じています。その基準に追いついていくのは簡単ではありませんが、期待に応えようと、アナリストの仕事を追究していく過程そのものに、やりがいも感じています。

――アナリストとしての今後の目標を教えてください。

まずは、マリノスを勝たせられるアナリストになることです。それがこのクラブで求められている役割だと思っていますし、そこは必ず果たさなければいけないと思っています。

そのうえで、日本で生まれ、日本サッカーの中で育ってきた人間として、将来的には少しでも日本サッカーに貢献できる存在になりたいです。

岩本 青 さん

プロフィール

岩本 青
桐蔭横浜大学スポーツ科学部
スポーツ健康科学科 4年
横浜F・マリノス アナリスト

小学生からサッカーを始め、高校時代にアナリストの道へ進む。大学ではサッカー部で分析業務に携わるとともに、横浜F・マリノスでインターンを経験。U-19日本女子代表やU-20日本代表でテクニカルスタッフを務めるなど、世代別日本代表にも帯同した。2026年シーズンより横浜F・マリノスのアナリストとして正式に加入。

※掲載情報は、2026年5月時点のものです。

Text & Photo by 仲里陽平(minimal)

UNIVERSITY INFO

桐蔭横浜大学スポーツ科学部
TOIN UNIVERSITY OF YOKOHAMA
Faculty of Sport Sciences
「スポーツ」と「からだ」の新たな価値と可能性を探究する
桐蔭横浜大学スポーツ科学部
「スポーツ」と「からだ」の新たな価値と可能性を探究する

国内初「スポーツアナリティクス人材を養成」する学修証明プログラムを開設

スポーツ教育学科とスポーツ健康科学科の2学科で構成され、幅広い教養と専門知識を体系的に学ぶことができる。スポーツの可能性を探究し、身体文化を通じて現代社会の課題解決に挑むことで、社会に貢献できる人材を育成。スポーツ健康科学科では、国内初となる「スポーツアナリティクス人材養成プログラム」を開設し、データ分析力を備えたスポーツアナリストの育成にも力を入れている。

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