【秋田大学】AIとロボットで、暮らしを支える未来をつくる
秋田大学 情報データ科学部 長縄研究室

情報データ科学部
長縄研究室
専門:制御工学/ロボティクス/医用工学
情報系学部にある「知能ロボティクス」の研究室では、どのような研究をしているのだろう? 近年、AIがコンピュータの中で答えを出すだけでなく、ロボットの目や耳、手足と結び付き、現実の世界で人を支える「フィジカルAI」が注目されている。秋田大学情報データ科学部の長縄研究室では、「ロボット技術にAIを組み合わせ、人の日常生活を支える」ことを目標に研究を進めている。医療、福祉、移動、生活支援など、私たちの身近な課題にロボットと情報技術がどう役立つのか、3つの代表的な研究から紹介してもらった。
日常生活の課題にロボットとAIで向き合う
「フィジカルAI」というキーワードが話題だ。世界中のAI企業が、このテーマの開発に力を入れているという。フィジカルAIとは、AIがカメラやセンサから現実世界の情報を受け取り、その状況を判断して、ロボットを安全に動かす技術のこと。AIが「頭脳」、センサが「目や耳」、ロボットが「手足」の役割を担うようなイメージだ。
秋田大学にも「フィジカルAI」の領域を学べる研究室がある。情報データ科学部の長縄研究室では、遠隔地から超音波検査を支援するロボット、眼窩エピテーゼに自然なまばたきと眼球運動を加える機器、音声で指示すると動く生活支援ロボットなどを研究している。一見すると異なる研究だが、共通する流れがあるという。まず、カメラやセンサなどで人や周囲の状態を測る。次に、得られたデータをAIがコンピュータで分析する。そして、その結果に基づいてロボットを安全で自然に動かす。つまり、「測る・考える・動かす」をつなぎ、人に役立つ仕組みをつくる研究なのだ。担当の長縄明大教授はこう語る。

「私たちが目指しているのは、ロボットをただ速く、正確に動かすことだけではありません。人の体格や動き、周囲の環境は一人ひとり、場面ごとに異なります。そこで、カメラやセンサから得られる情報を使って状況を理解し、その人に合った支援を行うことが大切です。ロボットは人の近くで使われるからこそ、『安全であること』『使う人が安心できること』『動きが自然であること』を重視しています」
遠隔地から超音波検査を支援するロボット
代表的な研究の一つが、遠隔操作による超音波検査支援ロボットだ。超音波検査とは、体の中の様子を音の反射を利用して画像にするエコー検査のこと。医師や検査技師は、「超音波プローブ」と呼ばれる器具を体に当て、位置や角度、押し付ける力を細かく調整しながら、診断に必要な画像を探す。特に心エコー検査では、肋骨の間から心臓を映すため、プローブが数ミリ動いたり、角度や力が少し変わったりするだけでも、画像の見え方が変わるのだという。
この研究では、遠隔地にいる専門医が操作した手の動きを通信で送り、患者側のロボットアームがプローブを動かす。プローブの位置、向き、移動量、体に触れる力などをセンサで測り、医師の操作やロボットの動きに反映させる。また、通信の遅れや急な動作があっても患者に強い力が加わらないように、力の上限を設けたり、接触状態に応じて動きを調整したりする安全制御も研究しているという。この研究で目指すのは、将来、専門医が少ない地域でも質の高い検査を受けやすくすることだ。

「超音波検査では、プローブを押す力が弱いと画像が不鮮明になり、強いと患者の負担になることがあります。検査に必要な画像を得るための力と、安全で快適な力のバランスをとることが重要です。そのために、力センサや位置センサのデータを読み取り、ロボットの動きを自動的に調整する『制御工学』が活かされています。高校で学ぶ数学や物理も、こうした安全な動きを考える基礎になります」
眼窩エピテーゼに自然なまばたきと眼球運動を
医療福祉機器の研究として、眼窩エピテーゼに動きを加える研究にも取り組んでいる。眼窩エピテーゼとは、病気やけがなどで眼球やその周辺組織を失った人が、顔の外観を補うために装着する人工の補綴(ほてつ)物だ。現在のエピテーゼは見た目を整えることを主な目的としているが、まばたきや眼球運動の機能がない。そのため、他者との会話中に左右の目の動きがそろわず、不自然に見えることがあるという。

「工学は、機械を正確に動かすためだけの学問ではありません。人が自然な表情で生活し、自信を持って人と関わることを支える技術にもなります。この研究では、健側(障害がない側)の目のまばたきや眼球運動を検出し、電気信号に変換します。そして、小型の機構を制御して人工物のエピテーゼ側にも同じ動きを再現します。目立たない外観、静かな動作、自然なタイミングなど、実際に身に着ける機器ならではの課題にも向き合っています」
例えば、人のまばたきの速さや眼球の動く範囲には個人差がある。そこで、目の開き具合や視線の方向を検出し、その人に合った動きになるよう調整する必要がある。この研究には、センシング、データ解析、機構設計・製作、制御技術が組み合わされており、医療福祉の課題を、情報学やデータサイエンス、ロボティクスで解決しようとする具体例になる。
音声で指示すると動く生活支援ロボット
秋田県は高齢化が進み、医療、介護、買い物、移動、除雪など、日常生活を支えるさまざまな場面での人手不足が大きな課題になっている。長縄研究室では、こうした地域の困りごとを「秋田だけの問題」ではなく、これから全国や世界の多くの地域が直面する課題として捉えている。秋田で実際の生活を見ながら研究することは、現場で本当に使える技術を考えることにつながると長縄教授は語る。
そこで進めているのが、4足歩行ロボットによる生活支援の研究だ。例えば、高齢者が「お茶を持ってきて」と話しかけると、ロボットが音声を理解し、部屋の中をカメラで確認。そして、ペットボトルのお茶を見つけ、安全な道を選んで近づき、ロボットアームでつかんで運ぶ。ポイントは、高齢者でも扱えるよう人の短い言葉を理解し、ロボットが順を追って各タスクを実行できるようプログラムを段階的に整理することだという。

「生活の中では、物の置き場所や人の位置が毎回同じとは限りません。そのため、ロボットは決められた同じ動作を繰り返すだけでは役に立ちません。人の言葉を理解し、カメラや距離センサで周囲を認識し、障害物を避ける経路を選び、対象物を壊さない力でつかむ必要があります。音声認識、画像認識、経路計画、把持制御(物をつかむための制御)という複数の技術をつなぐことで、初めて一つの生活支援動作が実現します。こうしたAIとロボットの融合に大きな意義があります」
「人の役に立つ技術を考えたい」という気持ちが研究の出発点!
AIやデータサイエンスと聞くと、難しい数学やプログラミングだけを思い浮かべるかもしれない。しかし、データサイエンスの出発点は、「目の前で何が起きているのかを、データから確かめること」だ。画像、音声、力、位置、人の動きなどを数値として捉えることで、医療、福祉、ロボット、地域の生活課題に対して、根拠のある解決方法を考えられるようになる。
「AIやデータサイエンスを学ぶことは、単にコンピュータの操作が上手になることではありません。『なぜ困っているのか』『どのデータを集めればよいか』『どんな仕組みなら安全に役立つか』を考える力を身につけることです。人の役に立つものをつくりたい人、医療や福祉に関心がある人、機械を動かすことが好きな人など、さまざまな興味がこの分野につながります。研究は一人で完結するものではなく、さまざまな人々と話し合いながら進めるため、相手の考えを理解し、自分の考えを伝える力も大切です」
秋田大学情報データ科学部では、1・2年次にプログラミング、数学、データ処理、AIなどの基礎を学び、その後、人間情報、データサイエンス、知能ロボティクスなどの専門へ学びを広げていく。
「長縄研究室では、その知識を実際のロボットや医療福祉機器に生かし、試作、実験、データ分析、改良を繰り返します。最初からロボット技術に詳しくなくても、『人の役に立つ技術を考えたい』という気持ちが研究の出発点になります。ぜひ秋田大学で、世界に向けて発信できるフィジカルAIの研究に挑戦しましょう!」
【研究室の詳細】
長縄研究室
長縄研究室は、制御工学、ロボティクス、医用工学を基盤に、医療・福祉や日常生活を支える研究に取り組んでいる。主な研究テーマは、遠隔超音波検査支援ロボット、眼窩エピテーゼへのまばたき・眼球運動機能の付与、音声指示で動く生活支援ロボット、自律移動ロボット、Sim2Real、遠隔除雪機の制御など。カメラ画像、力、位置、姿勢、音声などのデータを集め、AIやデータ解析によって状況を理解し、安全で使いやすい動作へつなげる。学生は、センシング、データ分析、プログラミング、実験を組み合わせながら、「現実の課題を技術でどう支えるか」を考えている。
詳細はこちら
秋田大学 長縄研究室
Text by 仲里陽平(minimal)/Illustration by カヤヒロヤ
秋田大学情報データ科学部では、年内合否の「総合型選抜Ⅰ」と翌年合否の「総合型選抜Ⅱ」を実施する。
出願期間は以下の通り。
- 出願期間
- 総合型選抜Ⅰ
- 2026年9月4日(金)~9月10日(木)
- 総合型選抜Ⅱ
- 2026年12月9日(水)~12月15日(火)
※出願前にエントリーやWeb登録等が必要な場合があります。
詳細は、必ず大学公式サイトや「総合型選抜募集要項」でご確認ください。
UNIVERSITY INFO
情報技術やデータサイエンスを活用し、デジタル社会を構築する
情報技術やデータサイエンスを活用して諸課題の解決を図り、新たな価値を創造することができるデジタル人材を養成するため、2025年4月に新設。人間情報や防災・エネルギー情報に加え、知能ロボティクスを内包する特色ある学部。地域や日本のデジタル化を推進し、情報関連産業をけん引できる人材の輩出を目指す。
カテゴリ
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学部・学科
- 【データサイエンスを学べる学部】
- ■情報データ科学部/情報データ科学科
- 【その他の学部】
- ■国際資源学部 ■教育文化学部 ■医学部 ■総合環境理工学部
所在地・アクセス
- 手形キャンパス(情報データ科学部)
- 〒010-8502 秋田市手形学園町 1番1号
JR「秋田」駅よりバスで約5分「秋田大学前」下車すぐ
問い合わせ先
- 秋田大学 情報データ科学部 事務部
- TEL:018-889-2268
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