【東洋大学 情報連携学部】「文・芸・理」の連携によってDXを推進する
東洋大学情報連携学部(INIAD)
情報連携学部(INIAD)
創設者
東洋大学情報連携学部(INIAD)が目指すのは、「文・芸・理」の知惠が高度に融合した学び。最先端のコンピュータ・サイエンスを基盤としながら、幅広い知識を「連携」させ、組織や社会を変革できる人材育成のための実践教育を行っている。日本の情報通信分野の権威として知られる坂村健INIAD創設者にINIADの独創的な学びについて伺った。
組織や社会をDX 化できる知恵を持った人材を育成
東洋大学情報連携学部、通称INIAD(イニアド)。Information Networking Innovation And Designの略である。ここでは、他のどのデータサイエンス系学部にもない独創的な学びが展開されている。
「今、世界はネットワーク化された先進的な情報通信技術により、『すべて』が変わろうとしています。『すべて』とは、ビジネスだけでなく、生活の仕方、社会の構造、さらには人々の考え方まで、まさに『すべて』です。INIADは、その新しいデジタル時代に対応するため、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進させるべく設立されました。そうした時代に対応できる人間を育成するために、従来とは違った新しい考えに基づく教育を行っています」
そう語るのは、坂村健INIAD創設者。1980年代から日本の情報通信分野で活躍している業界の権威で、ユビキタス・コンピューティングのコンセプトを世界で最初に提唱した研究者として知られている。
INIADでは、プログラミングを含むコンピュータ・サイエンスを基盤とし、新しい社会や様々な分野のDXで必要とされるスキルを身に着け、さらにそれを元に多様な他者──さらにこれからの時代にはAIともチームを組んで連携しイノベーションや社会デザインを推進できる人材を育成することを目指している。
入学した学生は、まず1〜2年次にかけて、すべての学生がプログラミング・数理(数学と確率統計)・コミュニケーションを集中的に学び、「情報連携」の基礎を身につける。その後、2年次からは、INIADが提供する7つの科目群(後述)から2つを選択し、専門科目を学習する。3年次には必修科目である「情報連携チーム演習」で、1年間かけて課題解決のプロジェクトに挑む。その上で、4年次には1年間かけて専門的な卒業研究に取り組む。その後、大学院に進学し、より本格的な研究活動を行う学生も増えている。
「INIADでは、入学直後から、現在最もユーザビリティが高いといわれるプログラミング言語のPythonとWebの標準言語HTML、CSS、JavaScriptを学びます。これらの基本スキルをもとに、ソースプログラム管理システムGitを用いたチームでのWebサービス開発やPythonによるデータ解析、AI活用の基礎を2年次までに全員が習得します」
もはや取り組んでいる内容は、IT企業の社員と変わらないレベルである。「組織や社会を変革するための実践教育」とは、こういうことを指すのだろう。2017年4月に開設されたINIADは、開設から4年が経つ2022年にカリキュラムを大幅にアップデートした。デジタル時代に対応する学びとは、そういうスピード感で変化していくものなのだという。
では、改めてINIADの特色を見ていこう。
東洋大学情報連携学部(INIAD) 3つの特色
1 AI・IoT時代の「文・芸・理」融合教育
変化が加速する現代においては、高いレベルで「文・芸・理」の知惠を融合したIoT時代のモノやサービスがあれば、より早く成功をおさめることができる。ただ、ひとりで文系・芸術系・理系のすべてにおいて高い素養を持つ人はまれだ。そこで今求められるのは、自分が得意でない分野に対しても理解を持ち、共通の言葉で対話して、連携してプロジェクトを進められる人材だ。そのために創造したのが、連携するための「文・芸・理」の知識と学習がどうあるべきかを研究する「情報連携学」であり、その実践教育を行うのがINIADなのだ。
2 ネットワークとリアルを組み合わせた新時代の教育
ネットワーク時代の今だからこそ、INIADでは「その場に集うこと」を重視している。
INIADでは、すべての教材がオンライン化されていて、知識を受け取る部分はオンライン教材システム「MOOCs(ムークス)」を使って行う。学生は授業を受ける前に「MOOCs」で学習し、少人数の授業に臨む。リアルの場では、学生同士のディスカッションや教員からのフォローアップ、実際に手を動かす実習などが集中的に行われる。その他、ビジネスチャットツール「Slack」やリモート会議ツール「Google Meet」などのグループウェアを駆使して、リモートとリアルのハイブリッド講義を実現している。
「さらにINIADがある赤羽台キャンパスの建物(通称:INIAD HUB-1)には、5000個のIoTデバイスが取り付けられており、建物自体がIoT教材になっています。学生の実習ではIoT環境の機能をプログラミングにより変更するものもあります。例えば、学生一人に1つの個人ロッカーを与えますが、その開閉はプログラムからしか操作できないので、各自が自分の交通系電子カードと結びつけるとか、音声で開けられるようにするとか、プログラムを組めないと使えません。情報教育を実施するために当然Wi-Fiやクラウドコンピューティング環境を整備し、日本の大学としてもトップレベルの基幹ネットワークとの接続を学部単位に維持しており、学生各自が持つPCやスマートフォンでスムーズに授業や研究に取り組めるようになっています」
3 世界中の人々と「連携」するための教育
INIADでのチーム連携の基盤となるスキルを養成するためには、国籍を問わずコミュニケーションをとるための「語学力」だけでなく、アイデアやメッセージを伝える「プレゼンテーション力」、討論によって本質に迫る「ディベート力」、「ロジカルシンキング力(論理的思考力)」などが欠かせない。そしてイノベーションは、多様な背景を持つ他者との「セレンディピティ:幸運な出会い」がある環境で生まれやすい。そこで、さまざまな国籍や専門性をもつ学生たちが学び合う環境を通して、学生の「実践的コミュニケーション力」を養成できるようにカリキュラムが設計されている。
【特徴的なカリキュラム】
将来のポートフォリオを形づくる専門科目群
INIADでは、2年次から5つの情報科目群、および2つの連携科目群の計7科目から情報科目群を含む2つを選択し、専門科目を学習していく。「IoTからクラウド技術まで、最先端技術を身につけたエンジニアになりたい」「ビッグデータを活用した新規事業を起こしたい」「地域社会のDXを推進したい」など、自分の将来につながる科目群の組み合わせを選択し、その分野について深く学んでいく。科目群の詳細は以下の通り。
【5つの情報科目群】
コンピュータ・システム科目群
IoT時代の情報システムを構築するには、OS(オペレーティングシステム)からネットワークに至るまで、コンピュータ・サイエンスの体系的な理解が必要になる。この科目群では、最先端の情報システムを自ら構築するための知識・スキルを習得できる。
コンピュータ・ソフトウェア科目群
DXを実現するためには、社会のさまざまな課題を解決する情報サービスを設計・開発するスキルが求められる。さらにそれを実現するソフトウェア開発手法も必要になる。この科目群では、情報サービスの設計・開発を実現できる知識・スキルを養成する。
ユーザ・エクスペリエンス科目群
人を惹きつける情報サービスには、魅力的なUXデザインが不可欠だ。この科目群では、「人とコンピュータの関わり」に関するデザインを基礎から学び、新しいアイデアを形にするための実践的な知識・スキルを身につけることができる。
データサイエンス科目群
IoT時代において、ビッグデータを読み解き社会の課題解決につなげる力は不可欠のものだ。この科目群では、統計分析の知識を基礎に、機械学習やAI(人工知能)技術を活用し、ビッグデータを分析するための知識・スキルを養成する。
ICT 社会応用科目群
あらゆる業界でDXが求められる現在、プログラミングをはじめとするコンピュータ・サイエンスの知識は、就職後に大きなアドバンテージとなる。この科目群では、DXのための技術と制度の両輪での設計、セキュリティの技術などICT(情報通信技術)の実社会への応用を重点的に学習する。
【2つの連携科目群】
ビジネス構築科目群
IoTやクラウドを活用する知識とスキルがあれば、新しいサービスやモノを誰でもつくれる時代が到来している。この科目群では、技術者やデザイナーからなるチームを束ねて、新しいビジネスモデルを構築し、著作権等や経理等の会社運営の諸課題にも配慮して実ICT ビジネスを構築することのできる人材を育成する。
コミュニティ形成科目群
インフラの設計・管理、環境への配慮、健康、快適で便利なくらしの実現など、地域・コミュニティにおけるICTの活用はますます盛んになっている。この科目群では、公共経済の分野でICTを活用した地域・コミュニティ形成の基本的な考え方を身につけることができる。
【特徴的なプログラム】
学部横断で取り組む「チーム実習」
学部3年次の必修科目である「情報連携チーム実習」では、2年次に選択した科目群の専門知識・スキルを持ち寄り、学部内横断で5人程度のチームを組み、年ごとのテーマに応じて自主的にプロジェクトを立案し、1年間をかけて計画を遂行する。「連携力」を重視するINIADならではの、ユニークな取り組みだ。
実際の社会では、自分とは違う強みを持った仲間と協力することが必要だ。特に、スタートアップを始めとした社会の多くのICTビジネスは、エンジニア、デザイナー、プロジェクトマネージャをはじめ、さまざまな役割をもつ人々が協力してつくられている。そのような「社会」を疑似体験し、貢献をする意義、あるいはその難しさを知ることを目的としたINIADならではのプログラムが「情報連携チーム実習」なのだ。
【ユニークな入試制度】
INIAD独自の総合型選抜も
INIADでは、「一般入試」、「大学入学共通テスト利用入試」のほか、ユニークな「総合型選抜・特別入試」も実施している。
「総合型選抜・特別入試」では、出願期間までにオンラインによる「課題」に取り組み、試験を含めた「事前適性審査」を受験し、学部の定めた基準を満たすことができれば、「数学なし」の受験も可能となる。
「総合型選抜・特別入試」には、以下のような入試方式がある。
■AO型推薦入試(コンピュータ・サイエンス型)
すでにコンピュータ・サイエンスの十分な実績がある受験生を選抜する入試方式。自分の開発したソフトウェアをGitHub(開発ツール)上で公開していることが出願の条件となる。
■AO型推薦入試(INIAD MOOCs型)
プログラミングの学習を自力でも進められる素養と意欲がある受験生を選抜する入試方式。現時点で本格的なプログラミング経験がある必要はないが、以下の条件が求められる。
- 事前にINIADが提供する教材を用いてPython「プログラミング」の学習を進められること
- 高校で学習する範囲の数学(数学I・Ⅱ・A・B・C)を理解していること
詳細はこちら
INIAD Admissions Office
【卒業後の進路】
独自の企業マッチング制度がある
INIADの卒業生は、専門力(ICT分野の専門知識・スキル)、グローバル力(グローバルなコミュニケーション能力)、連携力(チームで課題解決する能力)を活かして、社会の幅広い分野で活躍している。
就職先は、IT業界の民間企業にエンジニアとして就職するケースが多いものの、近年はDXへの期待から金融業界、建設業界、コンサルティング業界などのほか、官公庁へも多くの卒業生を輩出している。
さらに、INIADでは、東洋大学としての一般的な就職支援のほか、独自の企業マッチング制度を実施している。学生は、INIAD在学中に身につけた基本的なITリテラシーからWebアプリケーション開発、フロントエンド開発、AIライブラリの活用に至るまで、細かく記載したスキルシートを作成。同様に企業からも学生に求めるスキルシートを提出してもらい、特に適性が高いと思われる学生を紹介しているという。このようなきめ細かなマッチングの効果もあり、「INIADの学生がほしい」と直接求人を出してくる企業も増えているという。
先進的な学びの特性上、専門用語の多い紹介記事になってしまった。さらに詳しく知りたい人は、ぜひINIADの入試サイトをチェックしてみよう。
最後に坂村INIAD創設者からINIADに興味のある受験生に向けてメッセージをいただいた。
「ChatGPTに代表される生成AIの登場で、誰でもネットで簡単にAIを使える時代になりました。INIADでもこれに対応して、全学生がChatGPTの上位モデルであるGPT-4を使って自分の考えを深め、より高度な思考力を身につけられるような環境・指導・教材の整備を積極的に進めています。ここはコンピュータサイエンス、データサイエンスを武器に新しいことにチャレンジする場所です。学ぶ意欲のない人は来なくていい。未来を切り拓きたい人だけに来てほしい。そのために「文・芸・理」を融合した入試制度やカリキュラムを整えています。皆さんとINIADのキャンパスでお会いできることを楽しみにしています」
詳細はこちら
東洋大学入試情報サイト 情報連携学部
【INIADに入学を希望する皆さまへ】
入学試験に対するINIADの考え
Text by 丸茂健一(minimal)