文系でも目指せる!情報系/データサイエンス系学部・学科で学ぶメリットや将来をまとめてみた
経済産業省の予測では、2030年までに日本国内のIT⼈材が最大で79万⼈も不⾜すると⾔われている。そこで注目されるのが、「情報学」「データサイエンス」と呼ばれる学問分野だ。日本の大学では、2020年代に入り、情報系/データサイエンス系の学部・学科が急激に増えている。今や文系でも目指せる分野になりつつある。情報系/データサイエンス系学部・学科で学ぶメリット、向いている人、卒業後の将来像などを調べてみた。
そもそも情報学、データサイエンスとは?
情報学(Informatics)とは、世の中にあふれるさまざまな情報を収集、処理、保存するための科学的な理論や技術を学ぶ分野。情報科学(Information Science)と呼ばれることもある。処理した情報を伝達、活用するための情報リテラシーも研究領域となる。また、多くの情報学部では、コンピュータを使ったプログラミングや情報ネットワークについても学ぶことになる。
データサイエンス(Data Science)は、データを科学的に読み解き、有用な価値を見いだす学問分野のこと。数学、統計学、情報工学、コンピュータサイエンスなど幅広い学問領域が基盤となっている。これらの専門知識を駆使して、データを収集、整理、分析、モデル化、可視化、評価する手法を身に付けて、さまざまな社会課題を解決することが、データサイエンスの目的だといえる。
情報系/データサイエンス系学部・学科で学べることとは?
情報系/データサイエンス系学部・学科では、情報処理や情報リテラシー、データ分析、プログラミングなどを幅広く学ぶことができる。データ分析の基盤となる数学、統計学も基礎から学べる。近年は、AI(人工知能)のパターン認識、画像認識、音声認識などを用いたさまざまな情報処理を学べる情報系/データサイエンス系学部・学科も増えている。機械翻訳や生成AIの基盤技術である機械学習やディープラーニング(深層学習)を学べるのもこの分野だといえる。
最近は、生物学系、医学系、薬学系、経済学系、社会学系(地域創生など)、デザイン系の学部・学科でも情報系/データサイエンス系を応用する学びに挑戦できる専攻やコースが探せるので、進学先を細かく調べる努力が必要だ。
情報系/データサイエンス系というと理系と思われがちだが、最近は文系学部に情報系/データサイエンス系学科やコースがある例も増えている。また、女子大にも情報系/データサイエンス系学部・学科が増加傾向にある。
情報系/データサイエンス系学部・学科に向いている人の特徴は?
スマートフォンのアプリを使いこなすのが好きな人、ゲームが好きな人、Webサイトをつくったことがある人など、デジタル系に興味がある人には向いている分野だといえる。また、街のトレンドに敏感で、マーケティングや商品開発の仕事に興味がある人にとっても情報系/データサイエンス系の学びは不可欠のものになっている。
一般的には、パソコンをはじめとするデジタルツールの操作が得意な人のほうが、情報系/データサイエンス系の学びとは相性がいいだろう。それでも高校時代からWebサイトやスマホアプリをつくる経験をする必要はなく、大学から学び始めても十分に間に合う。大事なのはデジタルツールが「好き」であること。興味さえあれば、知識をどんどん吸収できるはずだ。
数学が苦手な人には向いていないのでは?と心配する人も多い。確かに情報系/データサイエンス系の学びに「数学」は不可欠だ。しかし、研究者レベルの数学理論を学ぶ必要はなく、数学や統計学の基礎知識があれば十分だ。応用数学を用いて、AIを自らつくれるような人はごく一部。多くの学生は、プロがつくったAIを使いこなすことで、情報系/データサイエンス系の学びを深めている。
情報系/データサイエンス系学部・学科の魅力やメリットとは?
情報系/データサイエンス系の学びが果たす役割は、膨大なデータから社会やビジネスの課題解決につながる「価値」を見いだすこと。インターネットや情報システムなどを用いるIT分野に特化した課題解決の手法と思われがちだが、近年は医療用の検査、気象予測、物価予測、物流の効率化など、幅広い分野で応用されている。
例えば、運送会社が宅配便を10カ所に届ける際に効率的なルートを地図データから割り出す、がんの治療薬として役立つタンパク質を膨大なヒトのタンパク質データベースから探し出す……こうした場面で役立つのが情報系/データサイエンス系の知見だ。高度情報化が進む今、情報系/データサイエンス系の学びは社会のあらゆる場面で求められている。そのため、最近の大手企業は情報系/データサイエンス系で学んだ学生に注目している。
情報系/データサイエンス系学部・学科ではどんな資格の取得が目指せるの?
情報系/データサイエンス系の学部・学科を卒業することで、自動的に得られる資格はない。しかし、多くの学生が授業や実習を通して、「ITパスポート試験」「基本情報技術者試験」などを取得している。
以下が、情報系/データサイエンス系の学部・学科の学生が目指すことになる主な資格・検定だ。
- ITパスポート試験
- 基本情報技術者試験
- G(ジェネラリスト)検定
- E(エンジニア)資格
- 統計検定
- 認定AI・IoTコンサルタント
- データベーススペシャリスト試験
- Python3エンジニア認定
- 画像処理エンジニア検定 など
また、将来IT業界で活躍するためには、以下のプログラミング言語や開発ツールを使いこなせると強みになるだろう。
- プログラミング言語:
- Python、R言語、C言語、C++、JavaScript、SQL など
- 機械学習ライブラリ:
- TensorFlow、PyTorch、Keras など
- 開発ツール:
- VS Code、vi、Git、Docker、Kubernetes、*Unit、Selenium など
情報系/データサイエンス系学部・学科卒業後の将来は?
情報系/データサイエンス系学部・学科を卒業した学生は、IT系企業に就職するケースが多い。さらに、AIやプログラミングの知識を活かして、起業して自らビジネスを始める人もいる。ベンチャー起業家として成功する未来を描けるのも情報系/データサイエンス系学部・学科の魅力だろう。
一方、最近は、あらゆる業界・職種で情報系/データサイエンス系の知識が求められている。そのため、金融業界、医薬品業界、建築・土木業界、流通・小売業界、スポーツ業界、広告業界など、あらゆる企業に就職できる可能性もある。つまり、将来について迷っているならば、情報系/データサイエンス系学部・学科に進学し、自分が夢中になれる分野を見つけて就職するという選択肢もあるのだ!
情報系/データサイエンス系学部・学科は文系でも目指せる?
情報系/データサイエンス系の学びは、数学、統計学、コンピュータサイエンスなどがベースとなる理系の学問領域なのは間違いない。しかし、最近は文系の経済学や社会学、心理学などの研究領域で活用されるシーンも増えている。そのため、情報系/データサイエンス系を学べる学科やコースを持つ経済学部、経営学部、社会学部などの文系学部も増えている。
一方、情報学部やデータサイエンス学部においても「文理融合」の学びを展開しているケースも多い。文理融合の学びとは、文系分野と理系分野を横断的に学ぶこと。ITシステムを構築したり、データを分析したりするスキルだけでなく、社会課題の解決のためにそれらを応用していける人材を育成することが求められている。文系科目が得意ならば、文理融合を掲げているデータサイエンス・情報系学部を探してみるのもいいだろう。
情報系/データサイエンス系学部・学科の中には、数学科目で「数Ⅲ」を課さない、数学を選択する必要がないなど、文系学生に配慮した一般選抜を実施している大学もあるので、ぜひ調べてみよう。
文系でも受験できる情報系/データサイエンス系学部・学科の例
Text by 編集部/Illustration by 竹田匡志