創薬研究者の仕事内容と学べる大学
創薬研究者の仕事内容
薬が製品になるまでには、病気に効く可能性のある新規物質の探索・創出、非臨床・臨床試験による効果の検証や安全性の確認、品質検査による品質チェック、そして国からの審査・承認が必要となり、費やされる時間はおよそ10〜15年にも及ぶ。新規物質が薬として世に出されるのは2万個に1個ともいわれ、開発が中止されたもののコストまで含めると開発費用は500億円以上にものぼる。
新薬の開発は、基礎研究→非臨床研究→臨床研究(治験)→審査・承認→販売という流れで進んでいく。創薬研究者はその開発工程の中で、主に基礎研究と非臨床研究に従事する。
基礎研究とは、病気に効果のありそうな化合物をライブラリーの中から選別する、もしくはコンピュータのシミュレーションに従って、化合物を合成していく工程のこと。昔は天然素材から効き目のありそうな化合物を合成していたが、近年では化合物ライブラリーを駆使したコンピュータによるスクリーニング(選別)が主流となっている。さらに、機械学習などを用いた「AI創薬」も盛んに行われている。
非臨床研究とは、人工的に育てたヒトの細胞や動物を用いて、開発中である薬の効果の有無や安全性を確認する工程のこと。この非臨床研究の成果が出て初めて、実際にヒトの身体を用いた治験へと移行できる。
創薬研究者の年収や勤務先は?
創薬研究者の平均年収は、500〜900万円で、日本の平均年収と比較して高い水準といえる。経験やスキルによって、得られる報酬も変わってくる。
創薬研究者の勤務先として代表的なものは以下の通り。
- 医薬品メーカー
- 化粧品メーカー
- 製薬会社
- 医療系研究機関
- 大学の研究員(医学部・薬学部)
創薬研究者になるには?
創薬研究者に必要な資格
創薬研究者になるための特別な資格はない。そのため、創薬に関する研究力があることを示すために、薬学系や医学系の大学院に進学し、修士号・博士号を取得する人もいる。化学系や生物学系の大学院を経て、医薬品メーカーで研究職に就くケースも多い。薬学部に進学し、薬剤師の国家資格を取得しながら、創薬の研究に従事している人もいるという。
創薬研究者に必要なスキル
創薬研究者は化学、生物学、薬学に関する基礎から応用までの幅広い知識が必要だ。また、研究力はもちろん、成果が出なくても粘り強く研究を続けていく忍耐力も求められる。また、独自の視点やアイデアで研究に取り組む発想力も強みになるだろう。
最近は、化合物ライブラリーからのスクリーニング(選別)などの工程で、機械学習などプログラミングのスキルが役立つ場面も多い。生物学とデータ分析を融合したバイオインフォマティクスと呼ばれる分野も人気だ。創薬もAI・データサイエンスを活用する時代なのだ。
創薬研究者を目指せる大学・学部・学科
創薬研究者になるための知識を専門的に学ぶには、薬学部に進学し、薬剤師の国家資格取得と並行して研究職を目指すのが理想的だろう。ただし、薬学部進学は簡単ではないし、費用もかかる。そこで、理学部、工学部、農学部などの応用化学系・応用生物学系の学科に進学し、大学院まで創薬につながる研究を続けて、医薬品メーカーや医療系研究機関への就職を目指す道もある。
また、医学部に進学した後、研究医の道を選び、創薬に従事する人もいる。
Illustration by カヤヒロヤ