Webディレクター:Web制作の企画・編集・進行管理を担う調整役
第一制作部部長
Webディレクター
日々、目にするさまざまなWebサイトは、多くの人々が関わってつくられている。Webデザイナー、Webエンジニア、ライター、カメラマン……などなど。こうした多様なスタッフを束ねて、Webサイトができ上がるまでの調整役を担うのがWebディレクターだ。株式会社オズの北上由香里さんにWebディレクターの仕事内容や求められる資質について聞いた。
Webディレクターってどんな仕事?
通販サイトの特集コンテンツの企画制作を担当
Web媒体も紙媒体もつくる制作会社で、Webディレクターとして働いています。Webディレクターという職業は、Web制作におけるクオリティ管理や進行を調整する役割と思ってもらえればいいでしょう。
私は現在、食品を中心とした宅配通販サイトの運用に携わっています。私は主に毎週更新する複数の特集コンテンツの企画制作を担当しています。特集企画は、約半年前から計画します。年間52回ある更新日ごとに季節の食材やイベント、ターゲットの年代に合わせたコンテンツ企画を考えます。過去の実績と比較しつつ、「食」や「暮らし」に関するさまざまな資料を調べて、企画を考えることもあります。
ライターだけでなく、カメラマン、Webデザイナー、Webエンジニアなど、Web制作には多くのスタッフが関わります。これらのメンバーを束ねて、スケジュール通りに動けるように指示を出し、リリースまで全体を管理するのがWebディレクターの主な仕事です。
ちなみに、Webディレクターには、「編集者寄り」の人と「デザイナー寄り」の人と「エンジニア寄り」の人がいて、私はどちらかというと前者になります。必要があれば自分で取材を行い、ライティングやコンテンツの編集を行うこともあります。
企画提案からスケジュール立案、スタッフ手配も!
通販サイトの定期更新をやりながら、新規のWeb制作案件を担当することもあります。その際は、まずお客さまへのヒアリングからスタートして、システムの要件を整理します。ここで新たにつくるWebサイトの骨格となる「ページ構成案」や「サイトマップ(コンテンツの全体図)」などを作成します。その後、スケジュールと予算を確定し、スタッフを手配したら、やっと制作スタートとなります。ここでは主にお客さまとスタッフの橋渡しのような役割を担うことになります。
Web制作の仕事はファイルを納品して、サイトがリリースされたら終わりではありません。リリース後もコンテンツの更新作業を担うこともあるし、半年に一度くらいアクセス解析を行い、サイト改善の提案をしたりもします。最近は、こうしたデータアナリストのような仕事もWebディレクターが担う傾向が強いですね。
コンテンツの企画からアクセス解析まで、とにかく業務の幅が広いのがWebディレクターの仕事の特色かもしれません。そこが魅力であり、大変なところでもあります。多種多様な業務を楽しめるジェネラリストタイプに向いている職業かもしれませんね。
Webデザイナーに求められる資質とは?
新聞広告のデザイナーからキャリアをスタート
私はもともと新聞広告のデザイナーからキャリアをスタートして、次第にコピーライティングや編集の仕事を任せられるようになりました。カタログ誌のMD(マーチャンダイザー)という仕事を経験していた時期もあります。これは掲載する商品の企画や仕入れを担当する仕事です。
その後、時代が紙メディアからWebメディアにシフトするのに合わせて、現在のWebディレクターにあたる仕事を現場で覚えていきました。なので、「Webディレクターになりたい!」と思ってこの業界に入ってきたわけではありません。ただ、デザイナーとして積み上げた経験は、いまの仕事でも非常に役立っています。
必要なスキルの筆頭は「コミュニケーション力」
Webディレクターに必要なスキルの筆頭は、やはり「コミュニケーション力」ですね。多くのスタッフをまとめる役割を担うだけでなく、お客さまからしっかりヒアリングする力も求められます。最も重要なのは、お客さまが抱える「課題の本質」を捉えること。そして、それを的確に言語化して、周囲に伝えるスキルも求められます。もちろん簡単なことではありません。私もまだまだ勉強中です。
あとは、やはりAdobe系のグラフィックソフトを操作できるのは強みになると思います。最近はFigmaというWebデザインに使えるクラウドツールがあって、これが使えると「おっ!」と思われるかもしれません。あとは、Web制作の基本となるHTMLやCSSなどのコーディング言語の知識もあるといいでしょう。最近は、Webデザイナーを目指す上でもこうしたWeb開発のスキルがますます求められています。
また、経験としては、学生時代からWebサイトを自分でガンガンつくっていた人は、高く評価されると思います。当社の採用現場でも自作のWebサイトをポートフォリオとして持参する学生さんは、やはり注目されていますね。
Webディレクターの未来像とは?
仕事の魅力は「お客さまとの距離の近さ」
Webディレクターの仕事の面白さは、やはりお客さまとの距離の近さだと思います。お客さまが表現したいことを代わりに実現するのがこの仕事の本質です。「会社の理念」や「商品の魅力」をしっかりヒアリングした上で形にして、お客様に喜んでもらえたときには、大きなやりがいを感じます。「北上さんに頼んでよかった」って直接言ってもらえる仕事って、意外に少ないのではないかと思いますね。
就職しても勉強し続けることが大切
Web業界は移り変わりが速いです。デザインのトレンドも使うツールもどんどん変わっていきます。これから大学に行く受験生にとっては、入学するときと卒業するときで、仕事の内容がまったく変わっていてもおかしくはありません。もちろん、Webディレクターの仕事も今とは変わっていくと思います。
その点では、就職しても勉強し続けることが大切です。なので、学生時代から新しい知識をどんどん吸収する柔軟性を持って学んでほしいと思います。この業界で働く上でもっともキケンなのは、「思い込み」です。つまり、既成概念にとらわれること。さまざまな世代の人と話し、Web・紙問わずさまざまなメディアに触れて、柔軟な想像力を鍛えた上で、Web業界に飛び込んできてほしいと思います。
【取材協力】
株式会社オズ
「デザイン」を軸として、Web媒体や紙媒体を幅広く請け負う制作会社。Webサイトの企画からデザイン、開発まで幅広い工程をワンストップで担うことができる。また、紙媒体と合わせた広告戦略なども行っている。
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株式会社オズ
Text by 丸茂健一(minimal)